『「松本清張」で読む昭和史』 原 武史著
一昨日、十三ヶ月ぶりに一人で車を出して図書館に行き、借りてきた内の一冊。
原さんは清張に惹かれる訳を二つ挙げている。「一つは、清張の作品が戦後史の縮図であるという点」、「もう一つは、タブーをつくらないという点」であると書いている。タブーというのは天皇制や被差別部落、ハンセン病やGHQなどといったテーマのことで、ここに取り上げられた作品もまたその一部である。
『点と線』『砂の器』『日本の黒い霧』はかって惹かれた作品でもあり、原さんの解説を待つまでもなく細部が思い出されたが、天皇制に切り込んだ未読の『昭和史発掘』や『神々の乱心』(これは未完)は解説だけではよくわからなかった。
だが、天皇制についての研究者である筆者にとっては、むしろこちらの方に関心が深いようだ。国民的作家として司馬遼太郎と対比しながら、清張は「いまなお解明されない天皇制の深層を見据えようとした」大作家でもあり歴史家・思想家でもあるとしている。
正直言って現代の天皇制などにはあまり関心はないのだが、そのくせして「古事記」を読んだり古代史に興味を持ったりするのは矛盾していることになるかしらん。「宮中祭祀」というのは今でもアマテラスに祈る行為のことで、それは綿々と続いているらしい。
今日は全く春とは名のみばかりで寒い。トシヨリ二人、暖房の部屋に閉じこもってばかり。H殿は「高校地学」の教科書でお勉強。「ブラタモリ」の影響大である。
春浅し病のその後尋ねられ
- 作者:武史, 原
- 発売日: 2019/10/10
- メディア: 単行本
クチナシの実