霜の朝

空海の風景 上』 司馬 遼太郎著

 ようやくこのところの寒波が抜けたようだが、今朝は霜が凄い。

 老人病の薬を処方していただいている主治医のところまで歩いて出かける。元気なころは車で行っていたのに、この頃は歩き慣れたせいか歩く方が気持ちがいい。新聞に「インターバル速足」ということが紹介されていた。3分ごとに速歩とゆっくり歩きを繰り返すというもので、「負荷をかけ、酸素をたくさん消費、体力づくりに効率がよい」らしい。何でもすぐにとびつくと家人に呆れられながらも試すことにする。タイマーを持って歩き、3分ごとに速さを変えて5セット。実際はそれだけで終わらなかったので案外疲れた。今日は薬だけを出してもらってきたが次回は血液検査をお願いするつもりだ。そこで腫瘍マーカーの検査をしてもらえば、画像検査は半年に一回ぐらいでいいかなと前回の外科の先生の診断である。

 

 『空海の風景』上下二巻がなかなか進まない。空海がやっと長安にたどり着いた。ここまでの司馬さんの「空海」はひたすら真理を求めんとぎらつく独創性を盾にむやみに前のめりで進んでいく若者の姿である。

 圧巻は遣唐使船が漂着した福州での活躍である。正規の国使と認められず、密輸業者同然の扱いに耐えかねた大使の葛野磨呂は、無名であった空海に地元の長官への嘆願書を書かせた。この時の文書が残り、その詳細が解説されている。

 「論理の骨格があざやかで、説得力に富む。読む者の情感に訴える修辞は装飾というより肉声の音楽化のように思える。」と司馬さんはいう。

 この一文を読んだ福州の役人は驚き、直ちに態度が改まったというから「空海」の面目躍如というしかない。

 

 

 

 

         陽のあたる道を選んで霜の朝

 

 

 

 

空海の風景 上 (中公文庫 A 2-6)

空海の風景 上 (中公文庫 A 2-6)

 

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