大根

『別れの手続き』  山田 稔著

 年末だからとTの書庫になっている部屋を勝手に掃除をする。文庫は出版社別に段ボール箱に詰め、単行本の山は床を拭いて積み直す。ここで思わぬ発見があった。長い間読み直したいと思っていた捜し本が見つかった。どこを捜してもなかったのでミステリーと化していたのだがこんなところにというところだ。その他にもこれは読みたいと思う本が十冊ほど見つかって、いつも本の多さで文句を言われるTは「宝の山だ」と自慢げである。

 さて、山田さんのこの本もその一冊である。選集だから半分は既読の話だがいつもの山田さんの詩情あふれる文章に惹かれて再読、話の終わり方が絶妙で、これもいつもながら読み終えた後に深い余韻が残る。

 この本で読んだことのない作家を二人知った。一人は中村昌義。若くして亡くなり、寡作の人であったようだが図書館の閉架に一冊あるのがわかった。もう一人はフランスの作家ロジェ・グルニエ、山田さんの訳で何冊かあり図書館にもあるようだ。

 気になる作家や本があるとメモにして机上の箱に放り込んでいるのだが、ちょっとたまってきた。まだまだ呆けているわけにはいかないらしい。(情けないことに最近は呆けが多いので家族から注意が多い)

 「養老先生とまる」を二週連続で見る。養老先生のおっしゃることは哲学者か禅僧の言葉のようで無知浅学には何やらわからぬことも多いが、惹かれるものがある。昨日のところは高齢のまるが病気になり、そのせいで先生もお元気がなかったのが気になった。

 養老先生も83歳とか、計算してみると山田さんは90歳になられるようだ。75などというのは足元にも及ばないが、最近夢に出てくるのは昔の知り合いばかりだ。

 「自分の生涯は終わった。・・・自嘲的ではなく、じっと我慢して、あまり自己憐憫にかられないで微笑することは一番いいことだ」

 若い頃から回顧趣味があったという山田さんが、昔惹かれた『ヘンリ・ライクロフトの私記』の一節である。

 

 

 

        大根の出来がよろしと立ち話

 

 

 

 

別れの手続き――山田稔散文選 (大人の本棚)

別れの手続き――山田稔散文選 (大人の本棚)

  • 作者:山田 稔
  • 発売日: 2011/05/11
  • メディア: 単行本

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