冬に入る

『光の山』  玄侑 宗久著

 先週の「こころ旅」が宮城県だったので、震災の爪跡を改めて痛感させられた。ことに南三陸町のつるりとした町の様子を見ると当事者でなくても胸が痛む。前にも書いたことがあるが震災の二年ほど前、登米から気仙沼に向けて車で走り南三陸町の街中も通過した。日野さんが指を差していたホテル「観洋」で一泊、気仙沼線に沿っての海岸通りであった。この前のテレビで見ると駅跡は跡形もなく立派な高速道路が通っているようだ。

 玄侑さんの本はよく読んでいるつもりだったが、この本は未だ読んでおらずTが借りてきたので回してもらう。六つの短篇からなるが一つを除いて、津波で家族を失ったり、原発汚染で家族が壊れたりする話である。フィクションだがこれに似た出来事はいっぱいあったにちがいない。みんな辛い辛い話だ。

 玄侑さんはいたずらに放射能汚染を強調することに否定的のように思う。例えばCTなどは一回で一気に6・8ミリシーベルト被爆らしいが、当方などは年間に何回受けたことか。癌の治療として放射線治療もしたから被爆量としてはかなりのものだと思うが、医療としてはもちろん許容範囲を考えてのことにちがいない。不安を煽りすぎて風評被害や家族離散という悲劇も招いたことに、福島県人としての怒りが玄侑さんの気持ちにあったのだと思う。放射能汚染の件もそうだが、今のコロナウイルスも当初は極度に不安が拡がって重苦しい日々だった。もちろん今も感染拡大はつづいており、警戒することは肝要だが冷静に怖がりたいものだ。

  今日病院。退院以来毎週通っていた傷もやっと治癒してきて次回はひと月後になった。完全に痛みがなくなるまでは一年はかかるらしいが、まずまずである。

 

 

 

 

       ひらひらと餅菜のふたば冬に入る

 

  当地の雑煮には餅菜(正月菜)だけのすまし汁に餅を入れたものです。正月に食べごろになるように気温を考えて種まきをします。

 

 

 

 

光の山

光の山

 

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H殿の冬畑  里芋・キャベツ・白菜