コスモス

『ボクはやっと認知症のことがわかった』 長谷川 和夫著

 「解説」によれば著者は「痴呆界の長島茂雄みたいな人」だということだ。つまり認知症については第一人者ということで「認知症」という呼称変更に携わり、罹患の判断基準(長谷川式スケール)をつくった人でもあるらしい。ところが、その当人が認知症になられた。著作を読む限りまだ軽度と思われるが、生活への障害はいろいろある。自らも認知症になってわかったことのひとつは、「周囲が思うほど自分自身はかわっていない」ということ。だから周囲もその人の尊厳を大切に対処してほしいと言われている。。

 認知症になればなおさらのことかもしれないが老人になった私も似たような事はある。

 7月に後期高齢者の運転免許更新のため「認知症検査」を受けにいった。二十人ほどのトシヨリが集められて5.6人に分かれ、それこそ「長谷川式スケール」のような検査を受けた。不愉快だったのはその時の試験官の態度である。私も含めて確かによろよろした人間が多く、耳の遠そうな人もいた。それにしてもまるで幼稚園児を相手にするような態度と大声で、うっかり質問したら叱られてしまった。彼等が思うほど自分自身はかわっていないと思うのにトシヨリというだけで尊厳は傷つけられるものだと実感した。

 認知症には進行を遅らせる薬はあるが治癒そのものに効く薬はないという。「老い」は誰もが行く道であるから覚悟はしつついろいろ考えさせられた一冊であった。

 

 

 

 

 コスモスの押しよせてゐる厨口      清崎敏郎

 

 

 

 

昔、教科書で教えた「ひとつの花」の話を思い出しいます。戦争で父を失った少女が母と暮らす小さな家。母の踏むミシンの音が、カタカタと聞こえてくるコスモスに囲まれた家でした。

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