荒梅雨

『名画読本 日本画編』 赤瀬川 原平著

 ちょっと前NHKの「日曜美術館」で「蔵出し日本画十五選」というのをやっていた。(このところはその世界編である)BS日テレの「ぶらぶら美術館」でも山下さんの「死ぬまでに見ておきたい日本画十選」というのもあり、同じような企画だなあと思う。恐らくコロナで新しい収録が出来ずそういうことになったのだろう。そんなこんなで日本画を通して鑑賞する機会があったのでTの書棚からこの本を拝借してくる。

 テレビの企画ではNHKは古代の装飾古墳から始まり、日テレは平安末期の絵巻物からだった。両者に共通して選ばれていたのは等伯雪舟若冲であり、等伯雪舟は赤瀬川さんのこの本にも登場する。このあたりが日本画の歴史としては最高峰ということだろうか。

 等伯はやはり「松林図屏風」で山下さんは「大気を捉えた」作品だと褒め、赤瀬川さんも「霧のリアリズム」だと感心する。早書きとも思えるような筆のタッチで一気に描き上げているところもすごい。この絵の他にも「枯木猿猴図」を取り上げて、その筆遣いを「時代を超える気迫のアヴァンギャルド」とも評している。

 雪舟三者とも対象にした作品が違い、赤瀬川さんは「慧可断臂図」を取り上げている。感心の中心は達磨の身を包む白衣である。「ぬっとした生温かい体温がありながら清潔である。」と言われて、見直してみると、なるほどと思う。この絵も「松林図」同様実物を鑑賞したのだが、そこまでは気づかなかった。

 赤瀬川さんは、西洋画は「見たとおりにそっくりに、こと細かに描き上げる」というのが主流だったのに対して、日本画は「見たとおりというよりは、見て感じているとおりに描く」。「具体的には陰影の違い」で、陰影のない日本画は特定な時間でない、いわば「心に感じ続けている」ものの本質を描いているのだと言う。そう思えば光琳の「紅白梅図屏風」のようなあんなにデフォルメされた梅の木も小川も納得できる。

 さて、昨夜はTVで西洋編を見たが気味の悪い作品が多くてちょっと閉口であった。

 

 外科の主治医の診察を受ける。詳しくはMRIの検査をしてみないとわからないが、癌の骨転移には否定的であった。放射線で脆くなった骨が何かの衝撃で損傷したのではないか、ということである。実際に一時退院のとき酷い尻もちをついたことがある。そうだとしたらお笑いぐさだがありがたい。

 

 

 

 

         神の杉根こそぎ倒し梅雨荒らし

 

 

 

 

 

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この大杉が今回の大雨で倒れました。樹齢1300年だそうです。中山道大湫(おおくて)宿の神社。

 

名画読本 日本画編 (知恵の森文庫)

名画読本 日本画編 (知恵の森文庫)