春の風

街道をゆく 愛蘭土紀行 Ⅱ』 司馬 遼太郎著

 下巻は「ジャガイモ飢饉」の話から始まる。これは私でも知っていた有名な話である。アイルランドはジャガイモの国であった。ジャガイモは日本でもそうであるが手間がかからず短時間で収穫もできる。英国の植民地政策もあってジャガイモ一辺倒のその中心が病原菌におかされた。我が身の食料の確保も難しいのに英国の収奪は続き、多くの人が餓死した。苦しさからアメリカなどに移民した人も多く、なにしろ今でも当時半減した人口に戻ってはいないという。19世紀半ばのことである。

 しかし、アメリカに移民した人々の中から今までに三人の大統領を輩出した。ケネディレーガンクリントンである。(司馬さんはクリントンにはふれてない)

 『風とともに去りぬ』のスカーレット・オハラアイリッシュであった。彼女が最後に叫ぶ「タラの丘にかえろう」という台詞は感動的であったが、「タラの丘」がアイルランドの聖地であることは初めて知った。日本人の「高天原」のようなものらしい。

 ともかくアイルランドは数百年にわたって英国に苦しめられた。「英国憎し」という気持ちはなかなか消えないらしいが、このあたりはなんだか我が国と隣国との関係を思わせる。

「一つの民族が他の民族に歴史的怨恨をもつというのは、その民族にとって幸福であるかどうか、わかりにくい。」

 司馬さんは「歴史は本来、そこから知恵や希望をみちびきだすもの」としてそう語るのだが、もちろん隣国のことを言っているのではない。

 アイルランドが世界的な文学者の宝庫であり、その妖精の息づく風土との関係などにもふれられているが、名前だけ知っても読んでいない身としては何も書けない。 

 

 今日は案外寒いのだが、我が家の桜が開花した。木蓮は満開である。

お隣の畑では子どもたちも交えてジャガイモの植え付け中である。

 

 

 

 

 

      はしやぐ声泣き声のせて春の風

 

 

 

 

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