秋の蝉

沖縄 二日目

 二日目はもっぱら北部の観光をしようと恩納村のリゾートホテルに泊まる。さすがにビーチで泳ぐ人はいないが水上バイクなどに乗る人はいるようだ。まだまだ暑い。H殿はジンベイザメ模様のTシャツなどを着てすっかりリゾート気分だ。そのくせできれば「チビチリガマ」の慰霊にも寄りたいというのでTがルートの検討をしているが観光は駆け足となりそう。

 最初に訪れたのは「万座毛」という景勝地。海に突き出た岩山が象の鼻に似ている。初めて見る植物や鳥の鳴き声に南国を感じる。人がいないと思ったのもつかの間、大型バスが次々に到着、中国語が飛び交う。海の青さを目に焼き付けて早々に退散する。

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 次の目的地は海洋博公園(美ら海水族館)である。かなり距離がある。名護市に入ってしばらく走ると山一円が赤土でむき出しになった異様な景色。H殿が「辺野古の埋め立て土砂を取ってるのだ」と言う。まさかと思ったがまさにそのとおり。「積み出し反対」の幕やら看板、運動中の人々が目に入る。埋立地は反対側だからここから船やダンプで運ぶらしい。観光とはまた違う沖縄の現実だと思いガラス越しに小さく応援の拍手をする。

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さて、「美ら海水族館」である。我々としては、ここではジンベイザメとマンタに出会うだけが目的。ここも修学旅行生がいっぱいだ。つらつらと見てはやばやとお昼をとり出発。

 近くの「フクギの並木」というものに寄る。沖縄らしい原風景だと以前来たYのお勧めだったが、村の人の生活圏だからあまり覗き込むのもどうかと思ううえに蚊が多くて痒い痒い。ひと廻りだけして次に向かう。

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 次は今日の観光目的としては最後の「今帰仁城(なきじんぐすく)」である。

14世紀に造られた石積み城塞の跡である。観光客はほとんどいないが、城跡一円に鋭い金属音が鳴り響いている。「ケーンケーン」といった音で草刈り機の音なのかと思ったりしたが入場券売り場の方に聞いて蝉の鳴き声だとわかる。ツクツクボウシ科の「オオシマゼミ」というらしい。ともかく初めて聞く音で驚いた。城跡は暑いうえに広大で石畳の歩道やら階段で疲れ気味の当方としては一歩々々がやっとだ。眺望を期待してよたよたと登る。上から見たのはかくのごとし。

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下りてきたところでニャンコ2匹を発見。「いいこだねぇ」と岩合さんばりに声をかけていたら一軒だけある小さな店のお爺に「サトウキビジュースはいらんかね。」と言われる。喉が渇いていたからいただくことに。「奥さんこっち持って」とジュース絞りを体験させられる。サトウキビを搾り機に押し込むだけだ。後は氷を入れて百パーセントの生ジュース、忘れていた懐かしい味だ。(昔は家でもアマキというサトウキビ作って夏のおやつにしていた)お爺は店先の大釜で黒砂糖を煮詰めておられたが、こちらは黒蜜だけを買う。看板猫のおかげで楽しい寄り道をした。

 さてこれで本日の観光はお終いにしてH殿の提案で「チビチリガマ」に向かう。ここは米軍の本島上陸で逃げた人々が集団自決した悲劇の場所である。2年ほど前に地元の中学生によって荒らされてニュースになったことがあった。参拝者のための小さな駐車場があったがトイレなどは壊れやや荒れている。「ハブに注意」の看板がやたらにあり当方は戦々恐々、恐る恐る階段を下りてガマのまえでお参りをする。鬱蒼として暗くここで死なねばならなかった人(子供や若い人が多かったという)の無念さを一段と思う。

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 二日目のホテルは国際通りから一歩入っただけの街なかである。H殿は旧友(この方はHとは教養部のころの寮友で、当時は国費留学生として本土に来ておられたのである。つまり沖縄の返還前の話)と食事をするというので当方とTは別行動となる。予約をいれておいた店はゆいレールでひと駅のところにあるようだが国際通りの賑やかさにつられて歩いて向かうことにする。夕方で大混雑、まさにアジア的喧騒と猥雑である。夕食は昨日に続いて沖縄料理とオリオンビール、二人で十品種も堪能した。歩いて帰るのはさすがに疲れてひと駅だけだがゆいレールも体験。

 ホテルに帰って万歩計を見たら16000歩弱、11キロで、我ながらびっくりであった。

 

 

 

 

      城一円ほしいままなり秋の蝉