曼珠沙華

ベオグラード日記』 山崎 佳代子著

 久しぶりに引き込まれて読了。筆者のことはもちろんベオグラードという地名にも馴染みがなかった。ベオグラードというのはセルビア共和国の首都、かってはユーゴスラビアの首都という。バルカン半島の複雑な政争で今はセルビアの首都というのだがこのへんの事情は無知でさっぱりわからない。彼女はここに在住四十年、詩人であり翻訳家であり日本文学の伝道者でもある。検索すればさらにいろいろな情報は出てくるがそれはこの本とは直接に関係はない。

 「日記」とあるだけにまさに日常の記録である。2001年から2012年まで。1999年コソボ紛争でのNATO空爆の話から始まり2011年の東日本大震災まで大きな重い話の間に何人かの親しい人の死や新しい家族の誕生、そして何よりも彼女自身の活動記録。

 仲間の詩人たちとの朗読会(あちらでは随分盛んなんだと初めて知る)翻訳と出版、博士論文の執筆。コソボからの難民支援。(このコソボ紛争というのもよくわからない。NATOセルビアと対峙してトマホークが打ち込まれ彼女の隣人にも犠牲者が出たというのだ。)そして詩作。

 これらが実に透徹した詩的な文章で綴られている。彼女の感受性に導かれて読み進む者も歓びに浸り哀しみに沈む。未知の土地にあこがれその歴史の過酷さに興味を抱く。

 

 彼女の近作が紫式部賞になったという記事が小さく出ていた。それもぜひ読んでみなければ。

 

 

 

 

        縄文の土器の前衛曼珠沙華

 

 

 

 

ベオグラード日誌 (りぶるどるしおる)

ベオグラード日誌 (りぶるどるしおる)

 

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今年はなぜか彼岸花の開花をあまり見ない。やっと見つけたのもつぼみが多いところをみると開花が遅れているのかとも思う。夏が暑かったからそのせいだろうか。