夏休み

『猫のためいき鵜の寝言 十七音の内と外』 正木 ゆう子

 随分と長い題名のエッセイである。

 「変な書名とおもうけれども、拙文もため息や寝言の類であるし、このところずっと『猫のためいき鵜の寝言 十七音の内と外』が調子がよく頭の中で鳴り止まないので、書名とした。」とあとがきにある。

 新聞に掲載されたコラムを纏めたものでひとつひとつは800字以内。最後に毎回著者の俳句がある。俳句は今までに読んだことがあるのもあれば初見のもある。気に入った次の二句は先にも読んだことがあるものだ。

 原つぱも不敗の独楽も疾うに無し

 ものさしは新聞の下はるのくれ

「言葉とは不思議なもので、想念を俳句にすれば、あっさりと片付けることができるのである。

 十七音の俳句という小さな箱に入れ、ラベルを貼って棚に仕舞う。思いはもう私のものでなく棚に並べて眺めることができる。」

まさに言い得て妙。ずらりと並んだ俳句は時々の想念の標本にちがいない。

 

 夏休みになって高校生の孫が毎日勉強にやってきている。怠けた彼はここが挽回のしどころだからしかたがない。昔、無謀にも休み中に数学の問題集を一冊仕上げると友人に豪語して掛けに負けたことなどを思い出す。

 「戦争と平和」やら「風とともに去りぬ」に挑んだのもやはり夏休みだったような。今のように我が家は冷房もなかったから本を抱えて風通しのいい部屋を転々とした記憶だ。

 

 

 

 

 

     スカーレット・オハラゐて遠き日の夏休み

 

 

 

 

猫のためいき鵜の寝言 十七音の内と外

猫のためいき鵜の寝言 十七音の内と外

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 臭木の花である。臭木というだけあって葉や茎は臭いが花はとても華やかでいい香りだ。青い実になればとてもいい染料になると志村さんの言葉。