戦後、筑豊の地で地域に根付いた文化活動に力を尽くした上野英信氏のご子息による回想譚である。谷川雁や森崎和江の名前は知っていたが正直に言って上野氏のことはよく知らなかった。今回これを読んで並々ならぬ信念の人であることがよくわかったので遅ればせながら著作も読んでみたいと思う。
回想譚の中で最も印象に残ったのは表題にもある「父を焼く」である。遺体と一緒に大量の本人の出版物を棺に入れて焼いたのだが、なかなか灰にならずに追い炊きをしたのだという。
信心深い、あるいはしきたりや作法を重んじる人からは、なんという不謹慎で罰あたりなと批難されるかもしれないが、本を詰め込み追い炊きをして骨は木っ端微塵というのも父らしくアナーキーでいいかと、ほんのり温かくなった骨壷を抱いて私は夕暮れ空の下に立った。
この後、筆者は棺にペンと原稿用紙も入れるべきであったと悔やむのである。
そう言えばユネスコ記憶遺産に登録された山本作兵衛翁の炭鉱画の価値を見出し、彼と親しく交わったのもこの英信氏であったことを初めて知った。
それにしても「すべての差別に異議を唱えて立ち向かっていたはずなのに」家庭人としては夫としてはどうであったか。遺族の話を通してではあるが、彼もまた思想とは裏腹に古い日本の男性像の残滓を宿していたという気がする。
雀らの賑やかなこと梅雨晴れ間
- 作者: 上野朱
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2010/08/28
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久しぶりに雨が上がって農作物を見回ったら巨大なゴーヤを発見。いつの間にかこんなのがごろごろしていて、ちょっと閉口。
暇に任せて残り布であれこれ縫っている。ノースリーブチュニック(?)を仕上げ、今は二枚目。布が足りなくなって別布を切り替えてなど苦心の代物で果たして着れるかしらんと思う。上手くいけば楽しいがそうでなければ時間の無駄かな。