『百人一首がよくわかる』 橋本 治著
いつも拝見しているブログで新潮社「Webでも考える人」というサイトを教えていただき、そこで津野梅太郎さんの橋本治さん追悼文を読んだ。津野さんは内田樹さんの言葉を引いて
そのつど「説得でも教化でも啓蒙でもない」と内田がいうかれの説明する力のたしかさとやさしさに舌をまいた
と書いておられる。その「やさしさのある説明」に触れたくてまずはこの1冊。
百人一首は昔むかし高校一年生の冬休みの課題であった。なんでも今でも母校はこの伝統があるようで休み明けのテストに備えて必死に覚えた思い出がある。もちろん授業でやったわけではなく我が家に歌留多とりという優雅な習慣もなかったのでそれ以来というわけだ。しかしまあ大体は覚えているわけで若い日の勉強というのは侮れない。今回大間違いに気付いたのは
八 喜撰法師「わが庵は 都のたつみ しかぞ住む 世をうぢ山と 人はいふなり」の一節である。
「しかぞ住む」は「鹿が住む」じゃありません。「然ぞすむ」で「こんな風に住んでいる」
のですよということ。と橋本さんはやさしく教えてくださる。てっきり「鹿が住んでいる」と五十年思い込んでいた私は全く恥ずかしい。だってうぢ山でしょ、鹿が居るんじゃないとまだ言い訳したい気分。橋本さんはこの他歌の意味や並び方の妙、作者の経歴もやさしく教えてくださるのだが、まあまあどうしてこんな軟弱な男ばかりだろうと呆れるばかりで、まだ情念を赤裸々に詠んだ女の歌のほうが好もしい。百首の内一番好ましいのはと考えて
三三 紀友則 「ひさかたの 光のどけき 春の日に しず心なく 花の散るらむ
を選んだ。
九八 従二位家隆 「風そよぐ ならの小川の 夕ぐれは みそぎぞ夏の しるしなりける」
なども爽やかでいいのですが。
橋本さんのやさしく教えてくださるシリーズ他のものも読みたいと思う。
先月末のPET検査と内視鏡検査の結果を聞きに行く。期待して行ったのだがまだ少しだけ気になるところがあるとのこと。もちろん転移などがないだけでも喜ばねばいけないのだが。
苗札の花の色見て薔薇求む
- 作者: 橋本治
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昨日「大野町バラ公園」というところに行ってきました。大野町はバラの苗の出荷が日本一だそうでバラをコンセプトに町起こしをされています。苗が廉価で我が家も二本買ってきました。赤と黃です。