春霞

アイヌ歳時記』 二風谷のくらしと心 萱野茂

 どういうわけだかこんなことは滅多にないのに昨夜はとんと寝つけなかった。蒲団の中でもんもんとして夜半を過ぎ、とうとう起き出してこの本を読み始めた。

 ちょうど昨日の新聞に「アイヌ新法 成立」とあったからである。何でもアイヌ民族を法律上初めて「先住民族」と位置づけたものだそうだ。そう言えば少し前まで「日本は単一民族の国家だ」などと言った首相もいたくらいだから法律できちんとその存在を認めたのはよかった。もちろん手放しで喜べるという内容ではないらしく一部には反対もあるらしい。

 この本でもアイヌの人々の主食ともいえるサケを和人が「一方的に、獲ることを禁じてしまった」と憤っておられた。「アイヌ民族の食文化伝承のために必要なサケはどうぞご自由に、といってほしい」としておられるが、先の法律では「民族の儀式や文化伝承を目的にした国有林の利用、サケの採捕などに特例措置を設けた」とあるのでこのあたりの問題は解決したのだろうか。

 しかし、今現在アイヌ語がわかる人はどれほどおられるのであろうか。ある民族にとって言葉が失われることはどれほどの痛手であろう。形骸化した儀式は残ってもその精神は失われていくような気がする。その意味では「新法」といえども遅きに失したかもしれない。

 

眠れぬままに読んでまだ半分である。昼寝をしてはまた今夜に響くので眠気防止にぐだぐだ書いた。先の旅を思い出して一句。

 

 

 

 

            海峡をまたぐ大橋春霞 

 

 

 

 

 

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