83 1/4歳の素晴らしき日々 ヘンドリック・フルーン著 長山さき訳
帯状疱疹で額から瞼が腫れ上がりまるでお岩さん。片目が十分機能しなくて不便極まりない。それよりも痛みが酷いので「老人には強すぎるが」と、もう少し強い痛み止めを出してもらう。ところがこれが「ロキソニン」でなんだという感じだ。「ロキソニン」は老人には強すぎるお薬とは知らなかった。先生の話では今日がピークらしいが早くなんとか治ってほしい。
さて、掲載の本の話だがまだ読了はしていない。400ページ強もあるし片目ではなかなかはかどらないが、久しぶりに面白い。オランダ、アムステルダムのケアハウスに暮らす83歳のヘンドリックの日記調小説である。初めは文芸ウエブサイトに連載されたらしく筆者は匿名作家。なんでも当地では32万部のベストセラーになっているらしい。
中身は「もはやめざすものがない」と暮らしの虚しさに辟易したヘンドリックが「毎日を意義深いものにするよう頑張ろう」と施設の仲間と奮闘する話。彼らが「オマニド(年寄りだがまだ死んでない )クラブ」を結成するのもユニークだが、先例を盾に規則に閉じ込めようとする管理者は洋の東西にかかわらずどこも一緒だ。高福祉国家のオランダでもそうですかと思わせられるところもいろいろ。例えば「老人の虐待」についてヘンドリックはこんな批判も書いている。
ちゃんと教育を受けていない者を安い賃金で雇い、過酷な労働条件で働かせるとどうなるか。・・・何年も理事会が効率を重視した方策を取ってきた結果、自分たちの高い報酬を保証するシステムだけが残った。現場の職員には、介護の必要な老人をトイレに座らせ服を着せるのに、二分と十五秒しかない始末。よく拭けていなくて当然だ。
まるでこれは我が国の話ではないかと思うほどだ。今やどこでも老人はあまりもので厄介者らしい。ずばずばとした批判もさることながら老いの現実を笑い飛ばそうというところがこの本の面白いところか。一年間の日記だが残り半分を楽しみたい。
節節のギクシャクとして寒波来る
- 作者: ヘンドリック・フルーン,長山さき
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2018/10/05
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る