吊し柿

『砂の街路図』   佐々木 譲著

 先々週ぐらいの新聞の読書欄に紹介されていたので読んだ。こういう作品はどの分野に入るのかわからないがミステリー要素のあるエンタテイメントといったらいいだろうか。帯には「家族ミステリー」とある。

 突然行方を絶った父親が北国の街で溺死体でみつかったという幼い頃の体験、父はなぜ母と自分を捨てて失踪したのか、そしてなぜ死んだのか。母も亡くなった今、四十年前の疑問を明らかにしようと語り手が北国の街を訪れるところから物語は始まる。

 疑問が一つずつ氷解していくところにこの話の面白さがあるのでこれ以上は中身に触れられないが、舞台となるクラッシクな街の様子や謎解きの過程などまあまあ面白く読めた。しかし、殺人などがでてこないからミステリーとしては物足りない人がいるかもしれない。

 

 いつもいろいろ気にかけてくれる友達のIさんから「吊し柿」が送られてきた。我が家の柿が不作だったと書いたので、豊作だったIさんのところの渋柿(干し柿)をどうぞとのことである。ぼってりと飴色に干し上がった見事な干し柿である。早速いただいているが実に甘い。和菓子の基準は干し柿の甘さだそうだが、砂糖の乏しかった頃はこれが一番甘かったにちがいない。

 

 

 

 

     吊し柿日に日を継ぎし陽の恵み

 

 

 

 

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砂の街路図

砂の街路図