『狂うひと』「死の棘」の妻・島尾ミホ  梯 久美子著     その1

 600ページ強の大作でなかなか読み終えられない。運命の日が来て夫婦の対決が激化し、とうとうミホさんが精神病棟に入院するくだりまでは読んだ。

 ここまでで考えさせられるのは「文学と人間性」の関係である。「死の棘」は戦後文学の最高傑作らしいが、傑作だったら非人間的でも許されるのであろうか。島尾氏は夫人の意に沿うように「死の棘」を書いたようだが一方で愛人とされた女性はどうであろうか。詳しいことは梯さんの調査でもはっきりはしなかったようだが思い悩んだ末の自死ではなかったかと推察されている。反論も弁明もさせられず一方的な見方だけが世間に流布されてどんなに悔しくつらかったことかと思う。この点には「死の棘」を高く評価する吉本隆明氏さんも言及されていて「これはいったい何なのか、とぼくなんかは思ってしまいます」とある。大体島尾氏ははっきり言えば死を前提とした特攻隊員でありながら女性を籠絡したこと、あるいは傑作を書くために妻を狂気に陥れたことなど人間性という点では全く許しがたい。人を殺してその心理を書いたところでそれがいかに臨場感に満ちていても傑作とは言われまいのに、文学とはわからないものだ。

残りはまだ三分の一ほどあり。

 

 今日は各務原航空自衛隊航空祭で空が賑やかであった。ブルーインパルスの航空ショウーの写真を撮ろう思ったのに見るのを逸して白い航跡のみになってしまった。

 来春のチューリップを入れようと花屋さんに行ったら今年は売り切れて紫と白が6球だけ。他をあたるのもやめてパンジーとの寄せ植えで我慢することに。

 

 

 

 

     檻に熊かからぬ山の恵みかな

 

 

 

 

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