『俳句入門』 小川 軽舟著
たまには刺激を受けないとどんどん俳句から遠ざかるばかりだと思って借りてきた。基本をわかりやすく解説した本で改めて勉強になった。要となるような部分は作句や推敲の視点としてノートに書き写しもした。
印象に残ったのは写生句についての解説で、写生だからこそ発見がないとつまらないという部分である。発見というのは人より先駆けて見つけたというより発見的表現ということであろうか、例句としてあげられたのは
翅わつててんとう虫の飛びいづる 高野 素十
である。「翅わつて」まさに詠めそうで詠めない発見的表現である。
写生句同様、人事句についても発見がないのは詩にならないと手厳しい。人事句の三つの要素として感動があること、普遍性があること、そして、類想とは無縁の作者の発見が大事とある。例句にあげられたのは何れも名句で季語の取り合わせも絶妙である。
うつしみは涙の器鳥帰る 西村 和子
どの道も家路とおもふげんげかな 田中 裕明
西村さんは配偶者を亡くされた悲しみ、田中さんは故郷への思いを詠んだものだ。
さて、こんなことを書き連ねた後に自作句を書くのは恥ずかしいが、季語は悩んだ末である。明るい季語をと思ったのだがどうしても納得できず、はや冬の季語になってしまった。
看る人も杖手放せぬ寒さかな
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