秋ともし

『殺人者の顔』 ヘニング・マンケル著 柳沢由実子訳

 四百ページを一気に二日間で読んだ。久しぶりのミステリーで、実に面白かった。ブログに時々コメントをお寄せくださるこはるさんのお薦めである。スエーデンの作家のミステリーでヴァランダー刑事シリーズの第一作目。テンポのいい書きっぷりで(おそらく翻訳がいいのに違いない)終始息をつかせない。背景に現代ヨーロッパの抱える移民問題があり、その点でも現代的リアリティがある。スエーデンですら今や移民問題はこれほどまでに深刻なのかと初めて知らされた。

 ヴァランダーは風采の上がらない中年の刑事である。妻に捨てられ娘に家出され認知症になりかかった父親を抱かえ、それでもなお執拗に事件に挑む。同情しつつも増え続ける移民に戸惑う生真面目な市民的感覚にも同感である。

 この秋、彼の活躍を追ってみようかなあと思う。が、読み出すと他のことが出来ないのが問題だ。

 

 

 

     事件まだ解決を見ず秋ともし

 

 

 

 

殺人者の顔 (創元推理文庫)

殺人者の顔 (創元推理文庫)