秋澄む

『あ・ぷろぽ』  山田 稔著

 「あ・ぷろぽ」とはフランス語で「ところで」といった意味らしい。副題で「それはさておき」とあるからそれも同じような意味か、ともかくフランス語は全くわからない。(これでも大学時代は第二外国語でとったのに)

 さてこの本だが「それはさておき」とあるとおり軽い話が多い。あとがきによれば雑誌や新聞掲載の小編をまとめたものらしい。自ら「回想談」が好きだといわれるとおり、この中のいくつかは昔の友人のことであったり旅の思い出だったりするのだが、いずれも小編であり深い思いは薄い。

 記憶に残ったひとつは茨木のり子さんの詩集「倚りかからず」についての一章。

 おそらく作者は外に向かって昂然と言い放ったのではなく、みずからに言い聞かせるように小声でつぶやいたのだろう。倚りかかるまい、と。

 しかしと、手厳しい。

 ただその気概をこうもまともに、こうもわかりやすくでなく、もっと屈折し言いよどむ、しなやかな言葉で表現してほしい。「いちばん大切なこと」も言い様次第で詩にもなれば道徳にもなる。

 さてさて、こういう読み方もあるのかと目を開かされた思い。確かに茨木さんのこの詩は言葉の強さで胸を打つもので詩趣というものを感じるというものではないかもしれない。が、それにしても『道徳にもなる」というのはちょっと意地悪な言い方にも聞こえる。

 

 

 編み物の前身頃が編み上がって、さて三月から放りっぱなしの後身頃の続きをと、取り出してみて落胆した。編み始めに近いところでまたまた模様を間違えているのだ。よくよくぼんやりしている。これで後身頃も最初から編み直しである。まあ暇つぶしと思って自ら慰めることに。

 

 

 

 

     秋澄むや水琴窟に耳寄せて

 

 

 

 

あ・ぷろぽ―それはさておき

あ・ぷろぽ―それはさておき