冬晴れ

「ヒマ道楽」   坪内 稔典著

 俳人坪内稔典さんのエッセイ集である。1944年生まれとあるからひとつ年上。三十年来朝食に餡パンを食し、カバを愛し、力の抜き方を教えてくださる。いくつかの俳句や詩の紹介の内、思わず笑えるひとつ。全編ではないのが残念だが稔典さんの解説も混じえて以下引用。

 「長生きも/芸の内、だとさ・・・」口の達者な寝たきりのじいさんがつぶやく。すると四枚目のおむつを取り替えてから、よっこらしょと「腰を二つに折って/ばあさんは/三和土に降りる。」

ポリバケツに

ボシャリと放り込んでから

「人によりけり」と

小さく

つぶやく

                     天野忠『うぐいすの練習』芸より

トシヨリは「要するに、叱られ、笑われ、馬鹿にされることが肝心だ。」と稔典さん。こうやってモーロク的暮らしの醍醐味を愉しめば死はふわりとその延長線上にあるとのことだが、これがまだまだ難しい。

 

 

 

 

   冬晴れへ手を出し足も七十歳    坪内 稔典

 

 

 

 

ヒマ道楽

ヒマ道楽