鴨足草(ゆきのした)

「風山房風呂焚き唄」 山田 風太郎著
 図書館新刊コーナーで借りる。著者については「人間臨終図巻」を関川さんが取り上げておられたから気にはなっていたが読んだことはなし。忍法帖ばかりがイメージとしてある。これは旅・食・読書などの未刊行エッセイ集。作者壮年期のもので五十年ほど前の話も。いきおい現状とはちょっと違うなと思うところも。筆者はヨーロッパ旅行の体験から日本の貧弱な景観や観光地の不潔さをしきりに嘆げいておられるが、こんな点は随分改善されたのではないかしらん。最近どこへ行っても手洗いなどは清潔で気持ちがいい。こちらの体験からいえば酷いと思って使用できなかったのは比叡山根本中堂前の手洗い。外国人の訪問も多く宗教施設でもあるのに恥ずかしい気がした。これは一昨年前の体験だから改善されていたらごめんなさい。話が横道にそれたが、変わらないのはこの国のお役人の体質批判のくだり。「自分の『規則』だけをふりまわし、強者には弱く、弱者には強いのが、お役人風というものである。」とあるが最近の国会答弁はまさにそのとおり。あまりの詭弁に言っている本人は恥ずかしくないのかと思ってしまう。もっとも酷い代表をえらんだのも民衆で、日本人は観光のマナーなどでは成熟したようだが政治的成熟度はまだまだということだろうか。

 車で走っていたら長良川河畔は茅花の穂と樗の花。薄紫の花が雨模様の空を背景に烟るように美しい。久しぶりにパラパラときて畑のものには恵みの雨だ。




     石組みは井戸端の跡鴨足草(ゆきのした)




風山房風呂焚き唄 (ちくま文庫)

風山房風呂焚き唄 (ちくま文庫)