花屑

 南河内の国宝を訪ねて 二日目
 夜の間にかなり激しく降ったようだが、朝には幸いにも上がる。山の上の宿からは東の金剛山から西の大阪湾までも雨上がりの眺望が眩しい。
 さて二日目は少し北上、まずは藤井市の「葛井(ふじい)寺」へ。この辺りは「河内王朝」の地で周辺には小山の如き巨大古墳が点在。古代史好きとしては喧騒の町並の下に古の「河内飛鳥」を空想して胸が躍る。この寺も渡来人の「王仁(わに)氏」に始まると言う。
 御本尊の十一面千手千眼観音奈良時代初期の仏様。光背のように千の手をお持ちである。若々しいお顔は無垢の少年のようでもある。とても千年以上の歳月を経たお姿とも思えず惚れ惚れと見とれてしまう。庶民信仰の深い対象らしくお堂に座り込んでひたすらお念仏を唱える老人や白衣の札所巡りの人も。拝観料のお返しに紅白のお餅を頂いたのも初めて。

 葛井寺から十五分ほど。「土師の里」というここも渡来系の地の「道明寺」へ。このお寺は尼寺である。かってはお隣の道明寺天満宮の一部だったが神仏分離令で移転されたという。こじんまりした清潔感の漂うお寺である。建立は聖徳太子というが天満宮というだけあり菅原道真公ゆかりの寺。御本尊の十一面観音も道真公の彫られたものだという。空海といい道真といい歴史上の天才だ。国宝の十一面観音のおひとつで、端正なお顔で少し腰を捻っておられる。境内では道明寺粉で蒸した桜餅が売られており、購入。塩味に効いた桜葉と餡の甘みが美味しい。 

 これで今回の旅の目的は達したが時間もあることゆえと少し回り道をして高槻市の「今城塚古墳」へ。今世紀の初め、大量の形象埴輪が発掘され話題になった古墳である。被葬者は特定されてはいないがおそらく「継体天皇」と言われている。長い間荒廃していたので宮内庁管理の陵墓としては近くの「大田茶臼山古墳」が指定されているが、真実はどうであろうか。大量の形象埴輪が葬送儀礼の様子を表していたのではないかということで、今その様子が再現されている。飾り馬の隊列や鷹匠・力士・巫女・兵士など興味深い。外に飾られているのはレプリカだが隣接の「今城塚古代歴史館」には修復された本物も並ぶ。ガイドの方に丁寧に説明をしていただきとても勉強になる。

今回の旅も我が家らしく歴史探訪ということであったが名残の桜と芽生え始めた新緑の美しさはいうまでもない。              






     


     靴裏の花屑旅の名残かな