播州の国宝を訪ねて
 一日目
 以前句会で主宰が「播州」という響きがとても好きだと言われたことがあった。その「播州」の浄土寺を拝観したいというのが長年の想いでやっと今回訪問がかなった。
兵庫県には国宝はようけありますけどみんな播州ですなあ」と今回出会った案内人が誇らしげに言われたがまさにそのとおり。まず加古の駅家(うまや)の鶴林寺へ。往時は白砂青松の加古の浜近く松林の境内だったらしいが今は街場の一郭。聖徳太子由来の寺であり、太子堂と本堂が国宝である。太子堂は檜皮葺の優雅な曲線美の屋根をいだだく平安中期の建物である。内部は非公開だが宝物館に御本尊を安置。赤外線で発見された華やかな壁画の模写も復元されている。驚いたことに法隆寺の「夢違観音」に似た白鳳仏もあり国宝指定でないのは多少痛みのあるせいらしい。本堂の薬師如来秘仏だが同じお姿の仏様が新薬師堂に安置されている。


 鶴林寺から20km北上。小野市東大寺別所であった浄土寺へ。最近Eテレの国宝巡りで紹介もされていたが、今回の旅の一番目的。小さな堂のなかに見事に大きな阿弥陀三尊立像。快慶作である。阿弥陀如来は5m30cm両脇待は3m70cmもあり見上げるばかりである。お堂の造りは天竺様といわれるもので天井も壁もなく力強い木組みそのまま、真っ赤に朱が塗られている。蔀戸からの光に照らされ、その朱が金色の三尊に映えて神々しく言葉もない。他にお参りの方もなく、三尊の周囲をぐるりと回って心ゆくまで拝観させていただいた。



 播州の国宝寺としてはさらに北上して朝光寺があるが、思ったより時間がたち、朝光寺は諦め一乗寺に。一乗寺は西国霊場26番札所である。平安建築の三重塔が国宝である。長い階段の先、わずかな踊り場に古風で力強い塔がある。写真を撮ろうとするのだが傾きかけた日が入りなかなかうまくいかず、上の本堂から見下ろす撮影に。

一乗寺三重塔

欲張って駆け足の一日目であった。宿は夢前川の辺りの温泉。池内紀さんの本で読んで以来いい名前だと思っていた「夢前川」である。なんてことはない中くらいの川なのだが、温泉宿はお値段の割には良かった。

 




     百六十二段いつきに里は霞けり





一日目に出会ったにゃんこ。「いいこだねぇ」と言ったら転がってくれました。