冬の山

「俳句と暮らす」 小川 軽舟著
 著者の俳句と著名俳人の俳句をテーマべつに取り上げて、思いを綴った俳句エッセイともいうべきもの。引用されている著名俳人の俳句は、よく知られた名句が多い。中でも圧倒的な存在感があるのは妻を詠んだ草田男や森澄雄の句、病床句といわれる子規・波郷の句。名句に支えられているところが大きく、肩の力を抜いた内容。理論派の師匠、藤田湘子の解説書や入門書を愛読した者としては物足りない。
「俳句は記憶の引き出し開ける鍵のようなもの」という一行には共感。

 横浜市の福島からの転校生に関する昨日のニュース。150万円の恐喝をいじめとしなかったその人権意識の低さ。全く憤りを感ぜざるを得ない。大人でもいざ知らず、中一にとっての150万が「奢り奢られ行為」の一端などと判断するとは、識者といわれる人の金銭感覚も疑わしい。福島で踏みつけられ、横浜でさらに踏みにじられた彼の気持ちを思う。




     冬の山立志の人も帰農せり




俳句と暮らす (中公新書)

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