400ページもある随分と厚い本である。司馬さんの亡くなった後に、おそらく未収録の歴史の関するエッセイを集成したもので、一巻目は古代史から豊織時代までの内容である。司馬さんの語り口が懐かしくて読み始めたのだが、まとまった話ではないので時間がかかってしまった。どうやら司馬さんが好きなのは空海であり義経であり秀吉であったようで、この三人のことになると語り口が熱を帯びてくる。
歴史上の人物の人物観というものはテレビドラマのなどの影響も大きいと思う、が司馬さんの本ほどではないかもしれぬ。息継ぎ、悩み、行動する人間としての姿を身近に感じたのは司馬さんのペンを通してで、従って彼の人物評価が常に背景にある。「空海の風景」などは随分昔に読んだきりだからもう一度読み直したいとも思う。
司馬さんは、重農主義より重商主義を評価する。この点で室町から戦国にかけてを史上「唯一の日本人のアクティブであった時代」で「明るくて、風通しがよくて、個々の人生に可能性があった」時代というのだが、そう言われてみると日本人の革新的・挑戦的側面が立ち上がってくるような気がしてなんだか楽しくなるのは不思議だ。
南朝の御座所とありぬ隙間風
- 作者: 司馬遼太郎
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2007/04
- メディア: 単行本
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