鳥渡る

「北のまほろば」 司馬 遼太郎著

 先日の赤坂さんの本に刺激され、再読。久しぶりに司馬さんのたかだかした文体に接して快かった。それは、まさに司馬さん流の喩えをつかえば、秋空に浮かぶ白雲のような快さである。

 「北のまほろば」は全編青森県紀行。津軽と南部(旧南部藩岩手県北部も含む)下北半島についてである。改めて読んで見ると、司馬さんの紀行文は風景に触れることもあるが、大半はそこに生きた人々の人物伝である。この本でも津軽を興した津軽為信という男や太宰治棟方志功記念という表現者たちに触れることが多い。また、この地域は本州で唯一中央の支配の及ばなかった蝦夷の地域で、かつ豊穣な狩猟と採集の文化を持ち、稲作においてすらかなりの先進地(いつのまにか途絶えてしまうのだが)であったことなどが書かれていた。まさに「北のまほろば」である。

 司馬さんの「街道をゆく」シリーズはかって夢中で読み、ほとんどが書棚にある。これらの本を片手に出かけることが楽しみでもあったが、こうした司馬さんの語り口にもう触れることはないと思うと赤坂さんではないが残念である。

 

 世俗の話になるが、衆議院での自己都合解散、それに伴う自己都合の離散融合、全く納得できない。こういう信念も理想もない人たちがリーダー面をしていると思うと情けない。つくづく絶望的気分。

 

 

 

 

     北上川背骨のごとし鳥渡る

 

 

 

 

北のまほろば―街道をゆく〈41〉 (朝日文芸文庫)

北のまほろば―街道をゆく〈41〉 (朝日文芸文庫)