十三夜

 陰暦九月十三日、今宵の月を「十三夜」「後の月」と称して中秋の名月ともにに愛でる習わし。どちらか片方では「片見月」として忌みきらわれていたとか。幸い今宵は月見に相応しい夜空のけはい。それにしても十五夜ではなく、十三夜というのが面白い。九月の月見は中国伝来の習わしに対し、十月の月見は日本独自の風習。澄み切った夜空といい、ひんやりする大気といい、少し欠けた月といい、こんなところにも日本人の美意識が隠れているかもしれぬ。

 急激な秋の深まりに心急く思い。夏の後始末から冬の支度と慌ただしい日常に、またひとつ歳を重ねた。



      湯めぐりの下駄の音ひびく十三夜