秋雨

 「人間晩年図巻 1995−99年」 関川夏央
 題名のとおり1995年から99年に人生を終えた人35人、その事績と死に繋がる晩年の顛末を描いたものである。よく知っている人もいれば、あまり知らない人もいる。良くも悪くもなべて密度の高い人生を送った人ばかりのせいか、若死が多い。35人中70未満が23人。今の自分より享年の若い人が三分の二もいて、愕然。凡々と生きて老衰で死んだ人を取り上げても面白みはないから人選が偏っているのかと思いたい。
 この本で面白かったことは他人の人生をたどりながら、同じ時代の自分の人生を思い出すこと。19年前ダイアナ妃が亡くなった時は、日曜句会の最中だった。遅れてこられた主宰が、「カーラジオで聞いた」と真っ先に話されたのを思い出す。渥美清が出ていたNHKのドラマ「若い季節」、放映は61年からだという。毎週楽しみにしていたなあと思う。その渥美さんも鬼籍にはいってすでに20年。
 「あとがき」で筆者は「時の流れは、水の流れよりも静かにはげしい。立ちすくむうちに私たちは老いる」と書く。まさに「歳月人を待たず」おのれの終章にも思いを馳せた一冊であった。


     秋雨や鉄扉を閉ざす石の街


人間晩年図巻 1995-99年

人間晩年図巻 1995-99年