葱坊主

 朝日新聞の日曜(15日)書評欄「思い出す本忘れない本」で女優の紺野美沙子さんが松田道雄さんの「育児百科」を挙げていた。あまりの懐かしさに戸棚の中から取り出してきた。見る影もないほどボロボロ。一時捨てようかと思ったのだが、随分お世話になったからと思い直してとっておいたのだった。この本のいいところは神経質に追い込まなかったところ。「離乳食に手をかけすぎるくらいなら、外に連れて出て外気にあてたほうがいい」赤鉛筆で線が引いてある。「ききわけのない子」という項目にもしっかりと線がひいてあるのは、よほど手を焼いていたにちがいない。「そういう子も高校を出る頃はふつうの人間になる」という一節に確かにと、納得した。歳を重ねた今では、あたりまえに思えることでも新米の母親にとっては大問題で、その意味でこの本はバイブルだった。


     八つ九つ憎まれざかり葱坊主