植木市

 古代史学者の上田正昭先生が亡くなった。先生を悼んで著作を再読した。いわゆる「大和朝廷」といわれる古代王権の成立と推移について大胆な考察を述べた本で、かつてとても心を踊らせて読んだ記憶がある。
 本書も「王朝交替説」で、二世紀後半の倭国動乱から卑弥呼・台与を経て四世紀の三輪王権、五世紀の河内王朝、六世紀初めの継体天皇を初めとする王朝まで、系譜の連続性はないと語る。また、それぞれの王権を巡る有力氏族との対立や、朝鮮半島や大陸との関係などにも触れ、古代王権が多くの矛盾をはらみつつ、確固たる基盤を築いていく過程をあきらかにしている。
 上田先生が「帰化人」という言葉を「渡来人」という言い方に改められたと聞くが,上田先生の持論を待つまでもなく、古代史に占める渡来人の存在はあまりにも大きい。このところのギクシャクした隣国との間柄を思うと謙虚さが必要かと思う。


     素通りのできぬ参道植木市



大和朝廷 (講談社学術文庫)

大和朝廷 (講談社学術文庫)