春の雨

『Nさんの机で』 佐伯 一麦著 作家生活三十年めにしてオーダーメイドで机をこしらえられたという。楢材の堅牢な机らしい。その机に向かい、物にからめながら来し方を振り返ったエッセイ。 世間の不条理にハリネズミのように挑みながら、自分の生き方を模索し…

花は葉に

映画『家族を想うとき』 ケン・ローチ監督 雨なので外仕事もできず、この冬11回目のマーマレード作りをする。ひとさまに押し付けたり、冷凍にしたりと作りに作ったが、多分これが最後。もう木にはいくつもなっていない。1回ごとに大ぶりを4個ずつ使った…

春うらら

『この父ありて 娘たちの歳月』 梯 久美子著 著名な女流作家たちに、父は何を残したか。彼女たちの筆で書き残された、父親たちの姿を紹介した一冊である。登場するのは、渡辺和子、斎藤史、島尾ミホ、石垣りん、茨木のり子、田辺聖子、辺見じゅん、萩原葉子…

飛花落花

花にかまけて うちの桜 うちの桜も満開となり、ときに、はらはらと散り始めた。 一昨日には娘一家と花見に出かけた。といってもこの辺りの桜の名所をぐるりと廻っただけだが。木曽川堤、境川堤といづれも「桜百選」のひとつで、見事な桜並木だ。 友人は自ら…

あさり飯

丹後への旅 一日目 陽気に誘われれ、今年一回目の旅をする。コロナはまだ終わったわけではなく、まずは車で出かけられる所をと、丹波への旅。いつものようにオバアの勝手な興味に付きあわせて「神社・仏閣+古代史」の旅である。 丹波といえば「天橋立」、オ…

うぐいす

『倭人伝を読みなおす』 森 浩一著 森さん最晩年、渾身の力が入った書である。「八一歳になって倭人伝の問題点を自分なりにまとめられたのは人生の幸運といってよかろう。」と書いておられる。 陳寿の倭人伝は、ほぼ同時代史料で史料的価値は高い。「倭国伝…

椿

『ぼけますから、よろしくお願いします。 おかえりお母さん』 信友 直子著 先にU-NEXTで観た映画の続編である。すでに去年劇場公開はされているようだが、U-NEXTでは観られないので、本を借りた。 介護サービスを利用されて二年、時に問題が発生しても家族の…

紅梅

『語っておきたい古代史』 森 浩一著 読書に気が乗らないということがあり、季節外れで始めた編み物に夢中になったりしている。編み物も根を詰めると倦みてくるから、養老先生ではないが。身体を動かすことが一番と(養老さんは煮詰まったときは身体を使うが…

卒業期

『死の壁』 養老 孟司著 壁シリーズというのは6編もあるらしい。総計660万部突発とうたってあるので、売れに売れているということか。一冊も読んだことがなかったが、Tの古本屋の均一本、積読棚にあったので引き出してくる。あとがきを読むと、このシリ…

草を焼く

『人物で学ぶ日本古代史 2』 新古代史の会[編] 既読「古墳・飛鳥時代編」に続く「奈良時代編」である。著名なところでは、藤原不比等から光仁天皇まで、奈良時代の「歴史をつくりあげてきた人びと」が取り上げられている。 それらの人はおおよそ知るところ…

春疾風

講演会「木曽川・前渡の戦い」を聴く 講師 丸山幸太郎氏 当地は「承久の乱」の激戦地である。大豆渡(まめど 現在地名は前渡)の地に、木曽川を挟んで上皇側一万、幕府側は泰時、義村の主力部隊が対峙した。ところが、去年の大河ドラマではナレーションの説…

下萌え

映画『ぼけますから、よろしくお願いします。』 信友 直子監督・撮影・語り 85歳で認知症の症状がでだした母を、95歳の父が面倒をみる。それをひとり娘が記録した家族のものがたりである。 新潮社のウエブサイト「考える人」で村井理子さんが絶賛してい…

春寒し

『日本史を暴く』 磯田 道史著 毎週水曜日、BSPの「英雄たちの選択」を見ている。(もっとも半分くらいは居眠りしているのだが)司会の磯田さんの視点がいいなあと、思うことが多い。そう思う人が多いのか、磯田さんは今や相当の売れっ子らしい。新書も次々に…

NHKBS1「大阪・西成ばあちゃんコレクション❗〜人生最後の服づくり」を見る たまたま見た番組で元気をもらった。見たのは「ばあちゃんたちの服づくり」の再放送である。番組の紹介から転用すると 「大阪・西成に世界も注目するファションブランドがある。手が…

梅ふふむ

『嫌われた監督』 鈴木 忠平著 華々しい落合時代をまざまざと思い出した。8年間で4度のリーグ優勝と日本一1度。ファンにとって、ことに忘れられないのは、2007年の日本一。末席ファンでも興奮覚めやらず、勢いに任せて、勝手な優勝記念としてマッサー…

冬芽

映画『阿弥陀堂だより』を観る 南木圭士さんの同名小説の映画である。2002年制作で、主演の樋口さんも寺尾さんもまだ若い。 都会の激務でパニック障害を病んだ女医美智子(樋口)、夫孝夫(寺尾)の故郷である山村に移り住むことから話は始まる。彼女は…

梅開く

『お墓、どうしてます?』 北大路公子著 軽いエッセイである。いつもちっとも読む気がおきない本ばかりの新聞の読書案内にあった。全く意外や意外で、藤田香織さんの紹介である。 お父さんが亡くなって、お墓をどうするかという話である。どうするどうすると…

春しぐれ

「川瀬巴水展」を観る 三重県菰野 パラミタミュージアムに於いて 川瀬巴水は大正期から昭和にかけて活躍した版画作家。「旅情詩人」と称されたように旅心を誘う美しい風景画をものにした。 初期作品から晩年作品まで279枚の展示である。驚くほど多作であ…

いぬふぐり

『人物で学ぶ日本古代史』 新古代史の会[編] 奈良の冨雄丸山古墳から楯形銅鏡と蛇行剣が発見された。どちらも過去に例のない大きさらしい。それにも興味しんしんだが、この古墳は4c後半の築造だというではないか。4世紀といえば、当時の権力者すらはっき…

冬深し

『偽りだらけの歴史の闇』 佐藤 洋次郎著 少し寒気が緩んできた気配だが、昨日は寒かった。当地は最高気温が3・3℃、おそらくこの冬二番目の寒さだった。閉じこもって居る日は台所しごとにかぎると、この冬四回目のマーマレイド作り。この前の強風でかなり…

霜柱

映画『ぼくらが本気で編むときは』 厳しい寒さが続いている。昨日は終日みぞれ混じりの雪で、閉じこもるしか仕方がなかった。午前中はこんな時にと、豆を煮る。滋賀の道の駅で買ってきた「花豆」である。部屋中に立ち込める豆のかおりは、気持ちを豊かにして…

寒波来る

『ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー 2』 ブレイディみかこ著 黄色の同名本の続編である。前編ほど話題になっていなかったか、パート2が出たのを知らなかった。 この本では当然ながら「ぼく」も大きくなって12歳から13歳ぐらいと思われる。イ…

底冷え

『土を喰ふ日々 わが精進十二ヶ月』 水上 勉著 今、沢田研二主演で映画化されているというので、手にとってみた。映画はどんなものか知らぬが、なかなか滋味あふれた一冊だ。文章が味わい深いというのもさりながら、紹介される食べ物が食欲をそそるのだ。 若…

日脚伸ぶ

『オホーツク街道 街道をゆく38』 司馬 遼太郎著 歴史書で森浩一さんの文章を拾い読みしていたら、司馬さんの話が出てきた。司馬さんの『街道をゆく』シリーズに触れて、最晩年の『オホーツク街道』が膨大な『街道をゆく』シリーズの中でも最高傑作ではな…

寒九

『老いの身じたく』 幸田文著 青木奈緒編 家事の途中、喉が渇いたからとごくごく水を飲んで、ああ美味しいとおもったのは久しぶり。今日はやや暖かく、水の冷たさが気にならぬ。飲んでいるうちに「寒九の雨」という言葉を思い出し、カレンダーで確かめれば、…

『失踪願望 コロナふらふら格闘編』 椎名 誠著 ワイルドでマッチョのイメージがあった椎名さんも、お年を召されたなあというのが一番。連れ合いと同じ78歳という。テレビか何かでお顔を見て、失礼ながら驚いた。コロナに感染して酷く重篤だったり、圧迫骨…

裸木

『ウクライナ戦争日記』 いち早く戦時下のウクライナからの報告。報道でも耳にするキーウ・ハルキウ・マリウポリ・ヘルソンなどの都市に生きる24人の声である。 突然の爆音で始まった戦争。一瞬にして崩れ落ちた日常。不安で眠られぬ夜。恐怖の脱出。私に…

初春

明けましておめでとうございます。本年も埒もない覚書を続けます。よろしかったらご訪問ください。 『マイホーム山谷』 末並 俊司著 さて、上記の本は「今年の三冊」にも挙げていた人がいた本で、昨年末から読み継いでいたもの。「山谷」でホスピスを立ち上…

年詰る

スマホで宛名印刷ができた 以前と比べたらほんの少しの年賀状だが、どうするか悩んだ。ブラウザがLinuxなので去年までは郵便局の「はがきデザインキット」を使わせてもらっていた。が、今年は宛名面の印刷サービスは取りやめたというではないか。裏面だけ作…

『年寄は本気だ』 養老 孟司・池田 清彦著 今年初の本格的降雪だ。報道では「岐阜市は10センチの積雪」。わが家辺りも概ねその程度と思われる。本格的な降りだったから、昔のように仕事に出かけなければならないのなら大変だ。こういう日は、無職の老人で…