鰯雲

『芭蕉紀行文集』 中村 俊定校注 図書館が閉館している間に、読み通した覚えのない本でもせめて目を通そうと、古めかしい本を出してくる。何と二冊もあり。一冊はTの買い求めたもので一冊は自分が買ったものらしい。 さてこれらの紀行文は『奥の細道』と異な…

秋の声

『遠き山に日は落ちて』 佐伯 一麦著 また佐伯さんの私小説を読んでいる。時系列でいえば、これは先の本『還れぬ家』より前の話で、斎木(語り手)は最初の妻との間に三人の児を成したが、感情的に折り合わぬものがあって別れている。今一緒に暮らしているの…

秋光

『還れぬ家』 佐伯 一麦著 『ア・ルース・ボーイ』のその後を読みたいと、佐伯さんの本を二冊借りてきた。年月を辿って読んでいくつもりだったのだが、この本の惹句で一挙に三十年後の話を読むことになった。 高校生の時家出同然のように家を出て、親にも深…

彼岸花

彼岸花が咲き始める 日差しがあっても朝夕は過ごしやすくなった。体調もやや回復してきて久しぶりに夕方に散歩をする。堤防のここかしこに彼岸花が咲き始めた。コロナで市民清掃の草刈りが行われてないので、草丈にまぎれているのが少し残念。今日は翡翠にも…

秋天

『バベットの晩餐会』 イサク・ディーネセン著 佐伯さんの著書で知った。図書館で借りてきたのだが、正直、面白味がわからなかった。ところが、何と先日BSでこの物語の映画が放映されたのだ。もちろん観たことは言うまでもない。1987年のデンマーク映画…

法師蝉

チュニック風ベストを縫う 少し涼しくなったのでこれからようにチュニック風ベストを縫う。今Tシャツの上に羽織っているもののデザインが気に入っているので、その秋用。ウールガーゼで縫おうとしたら思ったより布地がお高い。おおよそ1メーターが3000…

秋風

『ア・ルース・ボーイ』 佐伯 一麦著 自分に正直に生きようとする若さが痛いたしいが、読了感は爽やかだ。 英語教師に「loose」とレッテルを貼られた少年は、県下有数の進学校を後にする。同じように高校を中退して、婚外子を産んだ中学時代のガールフレンド…

つくつくし

『養老先生、病院へ行く』 養老孟司・中川恵一著 テレビの「養老先生とまる」でも採り上げられた先生の病気の顛末を、主治医の中川先生と一緒に振り返った話である。 病院嫌いの養老先生も身体の不調には勝てず、結局不満ながら医療システムに取り込まれて、…

新涼

『暗き世に爆ぜ』 小沢 信男著 その一 『俳句世がたり』の続きが読みたいとて、さんざん迷って久しぶりに本を買う。ケチではなくて物を増やしたくない。そんなことは一種の宗教だとTには言われるが、でも・・・まあいい。 さて、本は期待に違わず。一気に読…

虫しぐれ

『イスラム教の論理』 飯山 陽著 アフガニスタン政府があっという間に崩壊して、大混乱が始まっている。タリバンが全土を制圧したかと思えば、一昨日にはISによる自爆テロもあった。「イスラム教」とは一体どんな宗教なのか、全くなにも知らない。そう思って…

法師蝉

『ひとり』 加島 祥造著 この人の名は、一時『タオ』で耳にしたことがあったが、読んだわけではない。『荒地の恋』に名前が出てきて、ハッとした記憶もある。 すでに亡くなられたようだが、晩年(65歳からと本書にある)信州の伊那谷での一人暮らしを選ば…

おしろい花

『麦の冒険』 佐伯 一麦著 前にも触れたことがあるが、私はこの人の文章が好きだ。文章を通して感じられる人柄も気に入っている。と言ってもまだ小説は読んだわけではなく(「山海記」というのはどのジャンルだろう)今度も旅の随筆集だ。 「山の子」「海の…

秋出水

久しぶりに歩く 夕方になり日差しが差し、風が心地よい。夕餉の支度を早々とすませて少しだけ散歩をする。 東の空にうっすらと上弦の月。川の流れは速く、畦道には水たまり。 猫ちゃんたちも久しぶりの外の空気が嬉しいのかしらん。みんなで外に出ていた。変…

秋の蝶

『キツネ目』 グルコ森永事件全真相 岩瀬 達哉著 この事件は覚えている。マスコミを巻き込んだ劇場型の事件で、新聞で逐一報道された覚えがある。 本によれば始まりは1984年3月のことで、犯人が犯行終結宣言を出したのは翌年の8月11日、年表を見ると…

盆供養

『海をあげる』 上間 陽子著 出会いは「Webちくま」だ。入院中に読んで、いい文章だと思った。Tに話したら共感、全篇を読みたいと書籍化されたこの本を買ってきた。 筆者は沖縄に住む若手の社会学の研究者だ。「未成年少女たちの支援・調査に携わる」と著者…

夏終る

『アースダイバー 神社編』 中沢 新一著 Tが面白かったというので廻してもらう。中沢さんの「アースダイバー」を読むのはこれが初めてである。 壮大な実証的な仮説とでも言おうか、日本人の精神的基盤に深く潜った内容で、実に面白かった。それは、「神社」…

夏の雲

『東京焼盡』 内田 百閒著 その2 食べるものはともかく、百閒さんにとっては何よりもお酒が乏しくなったことは痛手であるのは、前にもふれた。薪も同様で風呂をたてることも難しくなり、半年ぶりに風呂に入ったという記述がある。炭もなくて火鉢もだめだと…

夕虹

『東京焼盡』 内田 百閒著 連日の猛暑で散歩もままならず。ワクチンは打ったもののコロナ禍は収まらず、オリンピックもいまいち気が乗らぬ。そこに加えてこんな本を読んでいると余計に気が滅入る。そう思いながら読んでいるから世話ないが、どうにか半分ほど…

思い出 本箱の掃除をしていて古い本を二冊出してきた。何度か捨てようと思っても捨てられない二冊。『二年生の童話』は昭和28年の出版。ちょうど二年生の時の購入らしく、父の字で住所と名前が書かれている。前書きに、「敗戦国の日本をりっぱに再建するた…

草を引く

『仮の約束』 多田 尋子著 この人の作品を読むのはこれがふたつ目である。以前読んだのは『老年文学傑作選』というアンソロジーの中の一編で「凪」という作品だった。老老介護というような内容で、背景に死があり、思いがけぬ結末が深い余韻を残したのを思い…

明易し

梅雨が開けたから 梅雨が明けたらやらなければと思っていた作業に、ひとつずつ取り組んでいる。まずは雨が跳ねてかなり汚れている窓拭き。昨日と今日とで南の縁側まわりの窓と玄関付近、リビングの窓は片付けた。すりガラスになったところや二階は無理なので…

炎天

ワクチンの二回目。広い部屋に点々と置かれた椅子で、接種後の待機時間をぼんやりと過ごしながら思う。 こんなに多くの人が一斉にワクチンを打って、一様に無言でぼんやりと待機している。同じような光景が日本中で(いや、世界中かもしれぬ)見られるのだろ…

『古代史講義 邪馬台国から平安時代まで』 佐藤 信編 本日梅雨明け。風があるだけ幸いだが本格的に暑くなってきた。 暑い中、ごろごろしながら読むのには不向きな一冊。読了までに一週間ほどかかった。 「最前線に立つ気鋭の研究者に依頼して、時代を追って…

はたた神

チュニックブラウスを縫う Tシャツは便利なのだが、トシヨリになって何となく見栄えが悪い。だからといって上に羽織るのも暑いので、チュニックブラウスを手づくりする。若い頃はストライブが好きで(それも太い濃い色のものが)縞模様ばかりを買っていた。…

青田風

渡辺省亭展(岡崎美術博物館)に行く ひと月ほど前NHKのお昼の地方番組で、この展覧会のことを知った。興味をそそられたがコロナのまん延防止中で、外出は無理かと思っていた。その後夕刊で高階秀爾さんがこの人に触れているのを読み、ますます気になったが…

梅雨

経過は良好 先日のCT検査の結果を聞きに行く。当地はコロナの感染も収まってきたせいか病院はかなりの人出である。約束の時間から一時間遅れで診察。結果は問題なし。「最初の治療から三年半が過ぎて問題もなく何よりです」と言われる。自分でも幸いかなと思…

梅雨深し

『落日の宴 勘定奉行川路聖謨』 吉村 昭著 川路の生きた時代はまさに激動の時代であった。軽輩の身から勘定奉行にまで上り詰めた一生も、またそういう時代が求めたものであったかもしれない。 この本で読む限り、川路の最大の功績はロシアとの和親条約の締結…

半夏生

雨模様の日が続く。 半年ぶりのCT検査。結果の診断は来週である。入り口で検温と消毒をされ、マスクで入場を許可されるというシステムはすっかり普通になった。人の数は以前と変わらないようにもみえるが、会計などでとどこらないようにいろいろ工夫がされて…

昼寝

夏用の座布団カバーを作る 昨日のワクチンで接種した方の腕が痛い。この手の副作用は半数以上の人にあるというが、昨夜はかなり痛かった。今朝もまだ痛かったが、今はかなり軽減。まあ、今日はのんびりしようと本を抱えて、成り行きで昼寝でもと思ったのに、…

雷雲

『在宅ひとり死のススメ』 上野 千鶴子著 この本はよほど需要が高いのか、半年ほど待ってやっと回ってきた。 上野さんの論というのは、こうである。 なにより満足のいく老後というのは、気ままな「独居」です。介護保険を利用すれば、死ぬまで独居ができます…