五月闇

『歴史の愉しみ方』 磯田 道史著

 昨夜から激しい降りで、明けても暗い。Yahooニュースの上段に当地が「災害レベル3」と出ている。ここは避難の必要な土地ではないが降り込んだ雨で玄関先までビッショリだ。

 連日散歩もならず面白く読みやすい磯田さんの本を愉しむ。あまりテレビを見る方ではないが、H殿と「英雄たちの選択」は毎週見る。いつもながら磯田さんの歴史観に感心する。視点が現代的なのである。

 さて、この本だが古文書を渉猟して新説やら新発見やらで、実に面白かった。とにかく磯田さんは好奇心が並外れて旺盛とみた。そのうえに古文書がスラスラと読める。そこが強みである。興味のおもむくままに書庫に潜り、古書の探査に出かける。案外古文書というものは残って居るもので驚く。

 ほんのちょっとだが、大河ドラマ「晴天を衝け」にでてくる渋沢喜作の名前が出てきて、おやっと思った。「幕府奥祐筆渋沢成一郎(喜作)」とあり、尾張徳川家などに政権取り戻しの出兵要請をしているらしい。随分出世するのだなあと思う。

 石川五右衛門関係も興味を持った。なんと彼の父は明智光秀側についた一色氏の重臣だったので、肉親を殺した秀吉ら勝利者を酷く恨んでいたようだ。大阪城や大大名の屋敷に忍び込んで財宝を盗んだのも、「敗者の陰気な反抗」ではないかと磯田さんは言う。

 犬山城の城主成瀬正成の話も、犬山城が身近だけに記憶に残った。正成は馬揃えの時、犬の被り物をしていて秀吉の目に留まったというのである。このところスーパーに出かけるたびに、うさぎの被り物をして歩いている人を見かけるのだが、結構高齢に見える人が、赤いうさぎを被って歩いているのはで何ともユーモスでちょっと異様。正成の犬の被り物はどんなのだったかと検索する。白帝城犬山城)の資料館に家宝として展示してあるらしいが、ネットでもみられる。屏風絵もあるが、正成弱冠十八歳のなかなかかわいらしい姿だ。

 小さな話ばかりを紹介したが、大事なのは「震災の歴史の学ぶ」編である。これはそれだけに特化した別冊『天災から日本史を読みなおす』もあり、以前その読後感も書いた。津波の話が主だが、500年に一度と言われる「明応地震(1498)」から500年後に今の我々は生きている。明応地震鎌倉時代のことで文献が乏しいが、鎌倉大仏の社殿を流し、浜名湖を海とつなげたのがこの地震だったらしい。磯田さんは歴史の災害事例に学ぶ大切さをくれぐれも説いている。

 今回磯田さんの本はもう一冊借りてきている。そちらはどんなことが紹介されているのだろう。今日は終日雨につき今年最後の「マーマレードの日」。

 

 

 

 

      コロナ禍の先見通せず五月闇