『盤上の向日葵』 柚月 裕子著
三年ほど前の話題のミステリーである。新聞の読書欄の推薦文を読んで読む気になった。巧みな書き手で前半は読ませられたが、後半は重苦しいだけに終わった。多くの人が言っているように『砂の器』を彷彿とさせるところはあるが、清張作品のように社会性があるわけではない。将棋を全く知らないので、主人公が将棋に執着して闇にひきずりこまれていく心情が理解出来ない。何より恩人の願いや気持ちを躊躇なく裏切っていくことも理解できない。結末に至る過程は「神の目」である読者には分かるが、物語の中では未解決で終わるのではないか。これも釈然としないひとつかもしれない。
桜はすっかり葉桜になり季節はどんどんと移ろっていく。何もしない間に時間ばかりが過ぎていく。
つぎつぎと花うつろひて春惜しむ
花蘇芳