歌留多取り

『黒いピエロ』 ロジェ・グルニエ著 山田 稔訳

 先に読んだ山田さんの『別れの手続き』で知った本、グルニエが自分の作品の中で一番気に入ったと語ったものである。グルニエ自身の青春の投影かもしれぬ「一つの挫折の物語」。(山田さんの言葉)詳細は「もう一つの物語」と題された訳者のあとがきに見事にまとめられているので、ここでは触れない。メリーゴーランドが回るように時は回って、若者は老い、苦い人生を振り返る。

 「今では私はもうむかしのように自分の人生をこれからどう生きるのだろうと自問したりはしない。むしろどう生きてきたかを考える。私は、われわれの時代を正当化しえぬ以上、それにたいして意味を求めることも止めた。・・・要するに私たち、・・・われわれの時代の敗北者だった。しかしある意味では難を免れた、あるいは半ば免れたといえるのだ、そう考えると私は気持が安らぐ。」

あの戦争の時代に青春をおくった「私」の述懐である。

 私も「どう生きてきたか」を考える歳になったが、そう問えるほど意志的に生きてこなかったと思うばかりだ。ただ私たちの時代には身近に戦争はなかった。いろいろ災害や政治的問題はあったが、成長していく明るさがあった。これからは、それが期待できそうにない時代が待っている。誰もが難を免れそうにない不安がある。

 

 

  懐かしいお正月

 

      負けてやるつもりが負けて歌留多取り

 

 

 

 

黒いピエロ (lettres)

黒いピエロ (lettres)

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