梅雨出水

『妻と私』  江藤 淳著

 関川さんの本を読んで以来、気になっていた江藤さんの本をTの書棚で見つける。巻末に追悼文も付け加えられており、多分これが関川さんの原稿の種本ではないかと思わされる.

 吉本さんが追悼文で「大へん感動した。しかしこの感動はたくさんの人にすすめて読者として分け合いたいというものではな」いと書かれている。他人の生死を話題にすることで野次馬的性質を帯びてしまうことを恐れられたということだ。吉本さんらしい人間的深慮だと感心しながら、その顰みに倣って私も中身には触れないが一気に読まされた話ではあった。

 結局江藤夫人は自分の正確な病状も病名も何も知られないままで亡くなったのであるが、知らない振りをしている当人も秘密にしている端の者も却って苦しかったのではないだろうか。最近は癌でも告知が前提だから以前とは随分違ってきた。まあ癌といっても完治の可能性が高くなったせいもあるだろう。私の場合も最初の病院では、ポリープかもしれないので大きな病院で診察を受けるように言われたが、今の病院でははっきりと病名を告げられた。

 さて昨日は形成外科の外来に出かけた。手術や入院についての説明を覚悟して行ったのだが思わぬ展開となった。手術にむけてのCTの検査で尾てい骨に異常が見つかったのだ。原因はわからないが尾てい骨の一部が溶けているので更に精密検査(MRI)が必要になった。したがって形成での治療は一時中断である。最悪の場合は骨への転移かもしれないが、仕方がない。本人より家族ががっくりきている。

 

 人吉市の水害が報じられている。八年前に訪れているが谷あいに開けたこじんまりしたいい町だった。レンタル自転車で廻ったから印象に残っている。あの町が泥水で埋まったのかと思うと本当に痛ましい。

 

 

 

 

        ロビーより川面見し宿梅雨出水

 

 

 

 

妻と私・幼年時代 (文春文庫)

妻と私・幼年時代 (文春文庫)

  • 作者:江藤 淳
  • 発売日: 2001/07/10
  • メディア: 文庫

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 散歩で出会った子