夏きざす

『道ゆきや』 伊藤 比呂美著

 伊藤さんの本はひさしぶりである。前回はご主人が亡くなり早稲田で教鞭を執ることになったという話だったから、この本はその後日談だ。

 物を失くすことが多くなったとか耳の聴こえが悪くなったとか色々あるがちょっと信じられないほど元気である。週の半分は熊本の自宅で週の半分は東京の大学で、その間に講演にも出かけ海外にも出かけと八面六臂の活躍である。アメリカと日本の間を行き来して介護をされたことからすれば同じ日本の中など隣町に出かける程度かもしれないと思ったりする。

 伊藤さんもとうとうアメリカの市民権を取られたようだ。それは必然的に日本国籍を失うということで随分葛藤もあったようだが、家族の暮らすアメリカに自由に出入りするには仕方がなかったらしい。なんにも知らなかったが国と国を跨いで暮らすというのは簡単なことではないのだ。伊藤さんも書いている。

  「女たち。異国の男と恋愛するな。恋愛をして外国に出ていくな。」

そうなんだ。こんなグローバルな時代になっても国と国のハードルは高いんだ。今回のコロナ騒動で国々の国境が封鎖されると問題はさらに深刻になるにちがいない。まあ、田舎に住んで隣町にすら出て行かない身には何ら関係ないが。

 

 一昨日退院後二回目のの診察に行った。手術の傷が治りきっていないと言われる。自力で治るのは難しい、いずれ形成手術をするようにとも言われる。「また手術ですか」と落ち込む。「もうちょっと回復して元気が出てきてからでいいですよ」と気楽におっしゃるが、どちらにしてもガックリだ。早速次回の診察時には形成外科の診察を受けることになった。秋には何処かに行こうと思ったのに秋にはまた病院かもしれないな。

 

 蜜柑と甘夏の花が満開で甘い香りが立ち込めている。今年は生り年らしい。なりすぎては困るからと夫が枝をすき始めた。晴れが続きで庭仕事に忙しい。

 

 

 

 

 

         鎮守まで試歩の千歩や夏きざす

 

 

 

 

道行きや

道行きや

 

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