牡丹

『平安鎌倉史紀行』  宮脇 俊三著

 史跡探訪紀行の第二弾である。対象は桓武天皇平安京遷都から鎌倉幕府の滅亡まで。累々たる敗者の歴史である。まさに『平家物語』の冒頭「盛者必衰の理をあらはす」である。「名こそ惜しけれ」と言ったのは鎌倉武士であったか。負け戦でも果敢に戦って死んでいく。

 例によって宮脇さんは愚直なまでに時代順に史跡巡りをされるので通史のおさらいになる。(もっとも直ぐに忘れてしまうのはいつもながらだが。)それにしてもすごい行動力だ。例えば承久の乱の史跡訪問は東京から美濃を経て宇治から隠岐までたった二日間の日程である。それでも見るべきものは見るということで紙上で跡を追うのも大変だ。元気で一日三万歩を歩いたとか笠置山千早城跡に徒歩で登ってまだまだと思われるなど衰えは少しもない。

 読んでいて懐かしかったのは平泉や今津の元寇防塁跡やら福山の草戸千軒跡を訪ねたこと。昔の写真集を出してきて懐古の想いに浸る。景色の隅にちょっとだけ映る夫や自分の姿に今更ながら時を感じる。時間は容赦ない。

 

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三種の牡丹も終わりました。人出を避けるため満開の牡丹を刈り取るニュースを見ましたがさぞかし胸が苦しかったことでしょう。

 

 

 

 

         息詰めて牡丹切らんと向かひ立つ