春浅し

『老年文学傑作選』  駒田 信二編

 ある人のブログでこの本の中の多田尋子さんの短篇『凪』がいいと知った。瀬戸内らしい小島での老老介護の話であった。悲劇ではあるが淡々とした筆致で読ませられた。入院当初はまだこんなものも読んでみようという気力はあったのである。

 しかし、この老人の暗い現実ばかりを集めたような選集にはとうとう手が出なくなり、半分は未読である。

 さて、個人的なことながら当方の話である。全く個人的だが同病の人の参考になるかもしれないと思って書くことに。(実際私はいろいろ検索させていただいた)

 最初に私が受けたのは「ダ・ビンチ」という医療ロボットによる腹腔鏡手術であった。開腹ではなく小さな穴からロボットアームを入れてそれで手術をするのである。先生はコックピットのようなところで画面を見ながらの操作である。穴が小さいだけ患者への負担は少ないという最新医療である。県の拠点病院であるこの病院もいくつかの症例を重ねてやっと去年から保険適用になったらしい。実際アームの入った穴は直に塞がった。

 もっとも当方はその手術で「腸をごっそりこそげとった」(研修医の先生の言葉)のでその方の治りは未だもってである。

 さてそうやって取った腸であるが病理診断の結果癌は見つからなかった。骨折り損のようなかんじだが強い放射線治療で、すでに機能不全だったからそれはしかたがない。これから癌の転移を恐れるリスクは少なくなっただけ幸いと思おう。

 こうやって前向きな気持ちで退院したのに一日で終わるとは思わなかった。後日談はまた。

 

 

 

 

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老年文学傑作選 (ちくまライブラリー)

老年文学傑作選 (ちくまライブラリー)