大掃除

木蓮の落ち葉の片付けがようやく終わった。いつもながら初冬の大仕事である。何かをしている方が身体を使っていいのだが、これでだいたい迎春準備は終了である。あとはおせちだが「昆布巻き」も「黒豆」も「きんとん」も不適食べ物でちょっと残念。家人のために二三品は作ろうとは思うのだがいまいち気が乗らない。

 さて、まとめることが好きな老人は一年を振り返って日記やら会計簿やらいろいろ整理している。ここに記すのは「読書記録」についてだが、今年の読了本は今日までで七十七冊である。まだ二冊ぐらいは読むとして概ね八十冊弱。去年よりは多いが一昨年よりは少ない。内容が問題なので数を誇っても意味がないが、この歳になっても眼だけは大丈夫で読書を楽しめたのは有り難い。

 私なりの「ベスト5」を選ぶとすれば何か。まず、好きな作家のお一人だったのに今年亡くなってしまった池内紀さんの『消えた国 追われた人々』を挙げなくては。紀行文としても秀逸であったし知らなかった歴史についても深く教えられるところがあった。

 二つ目はブレイディさんの本である。『子どもたちの階級闘争』と『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』。どちらも英国中心ながらリアルな今を描いていて実に勉強になった。

 三つ目は山崎佳代子さんの『ベオグラード日記』。この本でも無知な私はユーゴスラビア紛争の現実を知ったのであるが、それだけではなく山崎さんの詩的な文章にも魅了された。山崎さんにしろブレイディさんにしろ日本を飛び出した女性の文章がかくも魅力的なのはどうしてだろうか。お二人とも日常会話は日本語ではないのだろうに。

 四つ目は西東三鬼の『神戸・続神戸』。書かれたのは古いが文庫本として新装されたものである。これはなにより三鬼の人間的な魅力である。下手な俳句を詠む者として三鬼の句の背景を知ったのもよかった。そして五つ目は家人が古本屋で発掘してきた本田靖春の『誘拐』。古い本だが迫力のある筆致で惹きつけられた。

 さてさて来る年はどんな本との出会いがあるかしらん。病院に持っていく本を思案しながら「避暑に行くわけでもないのに馬鹿な」と思う私である。

 

 

 

 

          淋しさを忘れるための大掃除

 

 

 

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