『やわらかく、壊れる』 佐々木 幹郎著
久しぶりに図書館で佐々木さんの本を見つけた。もっとも随分と前のものである。
大半は都市に関わる話、ことに半分は東京讃歌である。あとは1983年に始まった中野刑務所の解体工事に伴い、設計者後藤慶二やその特異なデザインについての話。また関東大震災や阪神大震災の話もある。
これらを通しての持論は
「どんな都市でもいつかは必ず壊れる。・・・どんなふうに頑丈な建物や都市を造るかということよりも、どんなふうに壊れるべきかを、設計思想の中心とすべきではないか。いかにやわらかく壊れるか。」
そして、その未来の都市計画のヒントとして筆者は、「木とともに生きる。土とともに、水とともに」を挙げている。
折しも昨日新しい国立競技場の完成が報道された。従来の建築物と比べて木の使用をコンセプトにしていると聞くがそのあたりの設計者の考えというのはどういうものだろう。
本の後半に湾岸戦争によるアラビア海への原油流出の話が出てくる。筆者ら関西の有志が柄杓をもって流れた原油の汲み出しに向かうという話だが、そういえばそんなこともあった。
全体を通じて筆者の詩人らしいやわらかな感性とフットワークの軽さに驚いた一冊だった。
測量や売りに出されし冬菜畑