涸川

『日本浄土』 藤原 新也著

 紀行文が好きである。図書館の棚に一冊だけ表紙を表向けにして飾られていたから借りてくる。

 「今日、佳景に出会うことは大海に針をひろうがごとくますます至難になりつつあるのだ。」という筆者。それでも「うしなわれつつある風景の中に息をひそめるように呼吸している微細な命」を求めて旅した記録である。

 島原・天草・門司・柳井・尾道と記憶と共に巡る土地土地。土地にまつわる幼い日の記憶や若き日のときめきを思い出しながら今は亡き人々に思いを馳せる。しみじみとした旅情である。

 写真家であるだけに挿入された何枚かも味わい深い。

 

 夫が畑に入れるための堆肥づくりを熱心にしだしたのは一昨年頃からである。抜き取った草や枯れ葉の始末に始めたことだが、耕作にもなかなかいいことがわかって最近はかなり積極的にやっていた。今年も庭の枯れ葉が大量に出る季節になって、堆肥の山に枯れ葉投入の穴を掘っていたらカブトムシの幼虫がいっぱい出てきた。「自然の幼虫を見るなんていつ以来だろう」「まだいるんだ」とびっくり。何匹かはクヌギのチップで育てるようだが何匹かは元の山に埋め戻してやったようだ。というより自分で潜って行ったらしい。幼虫は苦手だけど無事に成虫になってほしい。もさもさと木が茂り昔ながらの我が家だが、虫や鳥にとってはそれなりにいいところであるらしい。

 

 

 

 

          涸川や孤高を守り鳥の立つ

 

 

 

 

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日本浄土

日本浄土