梅雨深し

カササギ殺人事件 下』 アンソニーホロヴィッツ著 山田 蘭訳

 三ヶ月ぶりの『カササギ殺人事件』である。正直に言って前編の話も面白味も概ね忘れてしまっており、気の抜けたサイダーでも飲む気分で読み始めた。ところが後編は前篇とはまるで違う話の展開。つまり前編は作中作で前編の作者が後編の被害者になるという入れ子の構造だったのである。前編の種明かしは後編のおしまいにさらりと触れられるというだけで、こういうのを傑作というのか。(惹句に去年のミステリー部門の5冠とある)ミステリーといったら犯人を示唆する手がかりが巧妙に仕掛けられていて、その謎解きが読者としても面白いのだが、すくなくともそういう楽しみはなかった。前半はアガサクリスティ風でも後半は現代の話なのだが社会性という点でも物足りない。それでも読み始めると先々が気になるのであっという間に読めた。

 

 今日も梅雨空。去年の日記を見ると連日の猛暑日である。それに比べて過ごしやすいのはいいが、所によっては冷夏との報道も聞く。これからがどうなるのだろうか。

 

 

 

 

       推理本降りみ降らずみ梅雨深し

 

 

 

 

 独歩『武蔵野』にあった一節を使ってみたくて物した一句です。

 

カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)

カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)