山藤

『三つ編み』 レティシア・コロンバニ著 斉藤可津子訳

 国も境遇も全く違う三人の女性の話を「三つ編み」のようにあざなった物語。キイワードは髪と自立。歯切れのよい畳み掛けるような文体と素早い展開で一気に読ませる。帯によればフランスで85万部突破32言語で翻訳決定とある。

 三人とはインド人のスミタ・イタリア人のジュリアそしてカナダ人のサラである。

 不可触民のスミタは娘を学校に通わせ悲惨な暮らしから抜け出させたいと思うのだが教師は賂だけ受けとりその願いを聞きとどけなかった。娘に教育を受けさせたいその一念でスミタと娘はふるさとを抜け出す。無一文に近いありさまで強い意志とヴィシュヌ神への信仰だけを支えに。

ジュリアは父の毛髪加工会社で働くむすめだ。父が事故にあって意識不明となったのきっかけに会社が倒産の危機にあることに気づく。窮状を脱するのに母は意に染まぬ男性との結婚を進めるのだが・・・。

サラは一目置かれる有能な弁護士。私的な顔と仕事を完璧に分け弱みは見せない。その彼女に乳癌が見つかった。いつもと同じように病気を隠し通そうとするのだが事情は知れ渡り職場の眼は微妙に変化していく。

最後は三人が三人とも陥った窮地から自分の力で這い出していこうとすることで終わる。その力強さがこの物語が多くの人に支持される所以にちがいない。あとがきで訳者がこの小説が支持されるのは「フェミニズム小説」という側面があるからと書いておられる。「フェミニズム小説」というのがどういうものかよくわからないがそういう見方もあるのかと思う。

 この三人のうちで一番過酷な状況と思われるスミタ、彼女の行く末が気がかりでならない。

 

 

 

 

         山藤やかんぬき堅き地蔵堂

 

 

 

 

三つ編み

三つ編み

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ハーブの花が咲き始めました。上からチャイブ・カモミール・セージです。