『鴎外の子供たち』 森 類著
森類氏は鴎外の末の子である。姉の杏奴さんの本を読んだ後、この本をTの本棚に見つけて読むことにした。書きだしにいきなり出版に絡む姉たちとの確執事情が語られていて、随分いわくつきの本であることを知った。姉たちが激怒したと言われる箇所は削除されたようだが、それでもかなり率直な筆致ではある。杏奴さんの抑制された理性的な書きっぷりとは違う。それだけに偉大な庇護者亡き後の妻と子たちの当惑ぶりが赤裸々に感じられる内容でもあった。類さんは自分は「不肖の子」だと言って卑下しておられるが、なかなかどうしてやはり文才の血は争えない。おそらく削除のせいだろうが途中冗漫な気がしないでもなかったが十分読ませられた。それにしても随分細かなことまで覚えておられるものだ。
幼い頃はひ弱で成人後もどちらかといえば生活力の乏しい感じの類氏がこの後どういう生涯をおくられたか、気になるところである。が、紆余曲折の果てに八十歳で穏やかな最期を迎えられたと解説で読み、他人事ながら安堵した。
みな出かけ一人の日曜昼の虫
- 作者: 森類
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1995/06
- メディア: 文庫
- 購入: 3人 クリック: 7回
- この商品を含むブログ (10件) を見る