蝉時雨

『私だけの仏教』    玄侑 宗久著

 副題に「あなただけの仏教入門」とある。玄侑さんの豊富な知識を駆使して解りやすく解説された実践的仏教入門書である。そして、読後、自ら「仏教徒」と思い何の疑問も抱かなかった私は、仏教とはこういうものであったかと初めて知らされた本でもある。もちろん玄侑さんの書かれているとおりに日本の仏教は「八百万状態」で、私の唱えるお念仏もお仏像を拝んで唱える真言も仏教の一部には違いないのだろう。が、本来の仏教というのは「心の平安を得るための方法論」ともいうもので後生を頼んだり病気平癒を祈ったりするものではないらしい。心の平安を得るためには目指すべき生活習慣として「戎」が必要視され「戎」のさきに多様な「行」があるのだという。それは念仏だったり、座禅だったり瞑想だったり読経だったりということらしいが、「戎」はともかくとして「行」はなかなか凡人というか私には高いハードルである。時々念仏し、時々瞑想の真似事をしてみるだけでは、とても「心の静謐」さは得られそうにもない。いずれにしても一度読んだだけでは消化しきれそうもない内容なので、またの課題である。

 

 

 

 

     惜命の声いちだんと蝉時雨

 

 

 

 

 波郷に「七夕竹惜命の文字隠れなし」という名句があって「惜命」という言葉が頭にあった。ところが、この言葉、辞書をひいてもでてこない。どうやら波郷のオリジナルな言葉らしい。あってもおかしくない言葉だと思うから、使わしていただいた。

 

 

私だけの仏教 あなただけの仏教入門 (講談社+α新書)

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