植田

『人生散歩術』    岡崎 武志著

 「こんなガンバラナイ生き方もある」と題して「脱力系文学者」の人生と作品を俯瞰しようという試み。選ばれたのは井伏鱒二高田渡吉田健一木山捷平田村隆一古今亭志ん生佐野洋子の諸氏。いずれ劣らぬそうそうたる顔ぶれである。

 同じ脱力系といっても多彩な趣味に生きたという井伏氏もあれば自分に正直に思うがまま生きたという佐野氏、思うがままが突き抜けて破天荒というほどの生き方をした高田氏や志ん生氏などひとくくりには出来ない。それにしてもかなりの人はよく飲む。飲むことが彼らの個性と感性を育んだということもあろうが、死期を早めたのも事実であろう。

 「刻苦勉励」系でも「脱力」系でも過ぎてしまえば人生は短い。どっちつかずの生き方をしてきた身には思うままに生きたというのは羨ましいが、それも才能や運や資質があってのことだろう。他人事だからこそ楽しく読ませていただいた。

 

 

 本家のYちゃんが田植えもすんだからと、顔を見にきてくれた。Yちゃんは従兄弟のお嫁さん。早くに夫を亡くし舅につかえながら田畑を守ってきた人。その彼女が嘆く。「日本の一次産業はどっかでまちがってしまったねぇ」と。Yちゃんところは今年も田植えをしたのだが、ほとんどが今は委託なんだという。委託されたところもそうもそうも請け負えず断ってもいるというから早晩荒れ地になるか、宅地になるか。ともかく我が家周辺はどんどん宅地化されて小さな建売が並んでいる。植田に鳴く遠蛙も聞かなくなって久しい。

 

 

 

 

     この国のこれがはじまり植田澄む

 

 

 

 

人生散歩術 こんなガンバラナイ生き方もある

人生散歩術 こんなガンバラナイ生き方もある