『千年の田んぼ』 石井 理津子著
2018年の中学校課題図書である。児童書なのだが図書館の新刊コーナーで見つけて、面白そうなので借りてきた。
山口県萩市の沖合45キロに浮かぶ島、周囲18キロ面積8平方キロの「見島」の話である。そんな小さな島なのだが、千年以上前の貴重な田んぼとため池群がそのまままの姿で残っているというのである。大化の改新以降の「条里制」の姿である。
筆者は農山漁村に残る貴重な文化を伝えることをライフワークにしている人のようだがもともとは「見島」の珍しいため池に興味をもって調査を始めたということだ。島であるために水田での水の確保に苦労した人々が考えだしたため池、それは他ではみられない小さな三角のため池で、その数は200とも300とも言われる。湧き水を利用したその小さなため池は小さな島に15ヘクタール(東京ドーム三つ分)もの水田を可能にしてきたというのだ。
このような離島にだれがこういう技術を導入してきたかということから話は発展し、この「見島」の特異な水田の形が古代「条里制」の手付かずの姿であることに至り、国境の島ゆえに中央からも重要視されたらしい「見島」の歴史が見えてくるのである。
千年もの間守り伝えられてきた「見島」の水田も今や他の地域と同じような後継者不足で、筆者の言うようにこれからが「知恵も力」もさらに必要になるに違いないようだ。
本家のYちゃんが来たので「今年は田植えをするの?」と聞いた。やるところもあればやらないところもあるという。今年から「減反政策」はなくなったと思っていたが地方単位では調整があり、作らない予定の所には水も来ないのだという。「Eさんとこの田んぼは全部水が来ないから今年は米を買わならんそうだよ」というのだ。何だかおかしなことになってるなあと素人は思う。一面に若苗がなびく水田の風景はだんだん幻になってくるのだろうか。
まどろみの髪にうすうす南風ふく
- 作者: 石井里津子
- 出版社/メーカー: 旬報社
- 発売日: 2017/12/01
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る