『貘さんがゆく』 茨木 のり子著
良かったからとTが回してくれる。山之内貘さんの詩と人柄についての茨木さんのエッセイ。全編茨木さんの暖かい眼差しと適確な選詩に溢れた好著である。貘さんの詩はよく教科書など載っているミミコの詩か沖縄についてのものしか知らなかったが、実にいい。随分貧乏で苦労されたようだが、ぐじぐじしない明るさとユーモアがある。茨木さんはそんな貘さんを「精神の貴族」だといい、その詩を「軽みとたのしさをもって、かがやいている」と評している。生前はたった二冊しか出せなかった詩集らしいが、今はちゃんと岩波文庫に収録されており、きちんと評価される人が評価されて、他人事ながらよかったと思う。
ミミコの独立 山之内 貘
とうちゃんの下駄なんか
はくんじゃないぞ
ぼくはその場を見て言ったが
とうちゃんのなんか
はかないよ
とうちゃんのかんこをかりてって
ミミコのかんこ
はくんだ と言うのだ
こんな理屈をこねてみせながら
ミミコは小さなそのあんよで
まな板みたいな下駄をひきずって行った
土間では片隅の
かますの上に
赤い鼻緒の
赤いかんこが
かぼちゃと並んで待っていた
新緑や巻いて教える帯祝
わさわさと新芽を茂らせた三葉。今日のお汁の実は何にしようかな。三葉もいいけれど韮も明日葉もみんな新芽を伸ばしています。
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