犬ふぐり

火山列島の思想』     益田 勝実著

 東北大震災から七年である。早起きをして何ということもなくネットを見る。YouTubeで震災前に旅行で行った小泉海岸(2016・3・11参照)の津波の映像を見る。津波の映像はなんど見ても恐ろしい。美しかった松林や家々がみるみるなぎ倒されていく。その後、この海岸に巨大防潮堤を造るという話も見る。高地集団移転後の海岸に巾90メートル高さ14.7メートルの海も見えなくする巨大防潮堤を造るらしい。これを批判する映像なのだが2014年のものであり、今はどうなったのか。検索してもわからない。

 先に読んだ対談集で玄侑さんが『火山列島の思想』に触れておられたのでTの本棚から借りてくる。この本で筆者は「日本的固有神」として「オオナモチ」の神を挙げておられる。「オオナモチ」は大黒さま、大國主である。史書に書かれた「オオナモチ」の火山神的な要素を挙げて「ナ」とは「穴」であり大きな火口を意味する神の名で、火山の神マグマの神が日本的固有神ではないかといわれるのだ。

 では、出雲でのオオクニヌシはどう考えるのか。これについても「出雲国造神賀詞」を引いて

    昼は五月蝿(さばへ)なす水沸き、夜は火甕(ほべ)なす 光く神あり

とやはり火山神的な神であったことを指摘されている。決して「良縁の神」というわけではないのである。

 最近放映されているNHKの「ジオ・ジャパン」でもこの列島がいかに大きな地殻変動の果ての今日であるか、まざまざと教えてくれるし、まさに今新燃岳は激しい火を吐き続けている。この国が常に予測不可能な自然現象にさらされずにはおられないという宿命が「オオナモチ」を畏れ祀ったということであろうか。今も昔もこの国は「無常の国」であるとつくづく思う。

 

 

 

 

    瓦礫みな人間のもの犬ふぐり   高野 ムツオ

 

 

 

 

 今年もまた高野さんの俳句を引かせていただいた。当事者に優るものはないと思うので。

 

益田勝実の仕事〈2〉火山列島の思想・歌語りの世界・夢の浮橋再説 ほか (ちくま学芸文庫)

益田勝実の仕事〈2〉火山列島の思想・歌語りの世界・夢の浮橋再説 ほか (ちくま学芸文庫)