『椋鳥日記』 小沼 丹著
この本について書いておられるブログを読んだ。Tの書棚にあったはずと出してくる。筆者のイギリス在住時のもので八編からなる短編小説集らしいが、小説というよりはエッセイという趣だ。プロットらしいものはなく淡々とした日常報告である。イギリスの街角の風景、市井で出会った人びと(それも老人が多いのだが)、疲れて入る食堂や居酒屋、そんなことが随分古めかしい表記で書かれている。どのくらい古めかしいかというと、ロンドンは倫敦、アイルランドは愛蘭、もっとすごいのは莫斯科・西班牙となる。仮名がなければ読めやしない判じ物もののようなこの二つはモスクワとスペインである。こんな表記と共に描かれる倫敦だからどんな昔かと思えば、七十年代初めの頃なのだ。そういうことではこれは小沼丹の創作したロンドンかもしれない。
小沼丹といえば彼と親しかった庄野潤三が一時期はとても好きだった。それこそプロットらしいものがない淡々とした家族風景だったが、その暖かさが好ましかった。あまりに毎回同じような展開に晩年の作品を読むのはやめてしまったが、ネットにフアン掲示板のようなのがあるのには驚いた。いまでも好きな人は多いようだ。その掲示板に庄野さんのご家族の書き込みがあり、昨年奥様も亡くなったことが報告されていた。ああ、光陰は矢のごとし。
さて、昨日かかりつけ医のところに出かけ健康診断の一環で身長測定もする。体重は減ったことはわかっていたが身長も若い頃から比べると5センチも縮んでいる。背中が丸くなっているといつもH殿に注意されるのだがこんな数字をみるとガックリとくる。孫に背筋が伸びていると言われたH殿はいつも元気である。
料峭や本堂で聴く仏典解
*料峭とは春になっても寒いこと
- 作者: 小沼丹,清水良典
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2000/09/08
- メディア: 文庫
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